東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

理工学部 理工学研究科

2023年4月より「創域理工学部」へ名称変更

次の50年後に向けて、さまざまな研究分野における「未来予想図」を理工学部の教員が描く

2017年に50周年を迎えた東京理科大学理工学部。次の50年後に向けて、未来予想図をイメージしました。

※内容や所属などは2017年度取材当時のものです。

1967年に設置された理工学部は、来年50周年を迎えます。
50年を機に学科・専攻を越えた複数の研究室で共通テーマに取り組む「横断型コース」の導入など新たな動きを見せる理工学部。次の50年後に向けて、さまざまな研究分野における「未来予想図」を理工学部の教員が大胆にイメージしました。

▼INDEX▼

災害を忘れた都市

【建築学科】 大宮喜文 教授 / 永野正行 教授   

都市全体の免震構造が実現すると、揺れないため建物の中の人は地震に気付かなくなるかもしれない。また、燃えにくい素材が開発されることによって、例え出火しても自然に消火される。

日本は世界でも有数の地震大国と言われ、世界で発生する地震の10~15%が日本で発生しています。“地震に強い街づくり”が急がれる中、近年、注目されているのが街をまるごと免震構造にする「免震人工地盤」の研究です。皆さんは「耐震」と「免震」の違いをご存知でしょうか?


耐震構造とは、建物自体が地震に耐えうる強度で造られているもの。建物の倒壊を防ぐ効果はありますが地震のエネルギーが直接、建物に伝わるため、地震の揺れによって壁や家具などが損傷を受けてしまいます。それに対して免震構造は、地面の上に免震装置が設置され、その上に建物が乗っています。地震発生時には免震装置が地震の揺れを吸収してくれるため、建物に地震の揺れが伝わりにくくなり、前述のような被害を軽減することができます。これを街全体に適用し、巨大な人工地盤をつくり、その下に免震装置を設置することで“地震に強い街づくり”ができるのです。さらにそこで吸収した地震のエネルギーを瞬間的に蓄え、電気等に再利用可能な技術ができれば一石二鳥ですね。


また、地震に伴って起こる災害として怖いのが火災です。そこで必要なのが“燃え拡がらない街づくり”の研究です。燃えにくい建材や住宅設備の開発によって、例え出火しても燃え拡がらない環境をつくることができます。こうした研究が実用化されれば、いつか人々が「災害」という言葉を忘れてしまう日が来るかもしれません。


健康チェックトイレ

【工業化学科※】 湯浅 真 教授 / 近藤 剛史 講師 / 相川 達男 助教

便器に内蔵されたセンサーによって自動的に尿の成分を分析し、健康状態をリアルタイムでチェックできる“インテリジェンストイレ”。測定したデータはオンラインで医療機関に送信されるため、病気の早期発見や、治療の経過観察に役立つだけでなく、数値の変化を日々チェックすることで生活習慣の改善を促すこともできます。


体調管理おまかせ人工心臓

電気電子情報工学科】 山本 隆彦 講師

現在の人工心臓は体内に本体を埋め込み、体外の機器とケーブルで連結する必要があります。しかし将来は小型化・高性能化によって社会復帰はもちろん運動も可能となるでしょう。さらに血液の状態を常時モニタリングする機能を備え、健康異常の兆しを感知して周囲の人や病院に通知できるシステムを備えるなど大きく進化します。


家畜や農作物の生産をコントロール

応用生物科学科】 諸橋 賢吾 准教授

ゲノム編集技術の発展によって、家畜や農作物の生産性が飛躍的にアップするでしょう。さらに全ての物がグローバルにつながっており、例えば農家は人工衛星からの情報をもとに最適な作物を選びます。人工衛星が農作物の状態を検出し、その情報を農家に伝えることで、農家は常に最適な状況で作物を育てることが可能になります。


世界規模の分散型電力網

電気電子情報工学科】 片山 昇 講師

太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、“発電量は自然任せ”なのが難点です。しかし将来、世界中の電力網がすべて接続され、高効率・低コストな送電技術や蓄電技術が開発されれば、環境負荷の少ない方法で発電した電力を世界中の国や地域が互いに融通し合うことができるようになります。


病気の部位を自動診断してくれる「体内スケスケ診断装置」

機械工学科】 竹村 裕准 教授

近赤外線で全身スキャンし、気になる部位をピックアップして問題のあるところを発見することも可能に!?

現在、医療現場で患者を診断する際に、広く利用されているのが画像診断技術です。例えばX線CTは、患者の体内を輪切りにしたような断層画像が得られるため、より正確な診断を可能にしてきました。しかし、X線を用いる以上、放射線被ばくの問題は避けられません。

そのため、より人体に負担が少ない技術が求められてきました。こうした背景から、私たちは「近赤外線を使った画像診断装置」の研究を行っています。「近赤外線」とは、赤外線のうち、波長が短い(0.7~2.5マイクロメートル程度)光線のこと。生体を透過しやすいため、“生体の窓”とも呼ばれています。

人体への影響が極めて少ないのが特長で、ATMの「手のひら静脈認証」システムなどに使われています。現在、厚さ数センチ程度の対象なら透過できる― 例えばマウスなら体内をくまなく観察できるレベルまで実用化されています。課題はカメラの性能ですが、光学センサー技術が進化すれば、全身をぐるりとスキャンするだけで、あらゆる病気のリスクを自動診断してくれる装置や、スマートフォンを使って自宅で手軽に乳がん検診ができるアプリなどを活用して健康管理をする時代が来るかもしれません。


壁や天井を自由に歩くことができるボディスーツ

工業化学科※】 有光 晃二 准教授 / 古谷 昌大 助教

ヤモリスーツを着れば、強い粘着力でどんな壁面でもすいすいと動くことができるようになる。

近年、私の専門である有機材料化学の分野でも、バイオミメティクス(生体模倣技術)を応用した研究が盛んに行われています。例えば、壁や天井などを自由に歩き回るヤモリの足の構造は、世界中の接着関係の技術者が競って研究開発を進めてきた対象です。


2000 年、米・スタンフォード大学の研究チームがその構造を解明しました。ヤモリの指先には、目に見えない細かい毛がびっしりと生えています。毛の先端にはさらに微細な突起が付いていて、この突起一つ一つが面と「ファンデルワールス力(分子と分子が引き付け合う力)」でくっつくので、どんな面にも自在に貼り付くことができるのです。この仕組みを利用して、日本のメーカーがカーボンナノチューブ(炭素原子が網目のように結びついて筒状になったもの)を用いてヤモリに近い粘着力を実現したテープを開発しています。

今後、さらに新しい材料を開発することができれば、ツルツルの壁面やゴツゴツした岩など、どんな所でも、映画『スパイダーマン』のように素早く移動できるようになるかもしれません。その頃には、建設現場で働く人や災害救助隊には、このような機能を備えたスーツが必須の道具となっていることでしょう。


地震の影響を受けない海上都市

土木工学科】 佐伯 昌之 准教授

“海に漂う巨大な島”。地震で揺れることはなく、津波が来てもゆるやかに上下動するだけで安全上の支障はありません。ビルの中で家畜や作物を育てるので食料自給率100%も可能な循環型都市です。さらに、晴れた海上を漂流して太陽光発電や風力発電をすれば、環境に負荷を掛けずに自立した生活が可能です。


3Dプリンターで作る飛行機

機械工学科】 松崎 亮介 講師

現在、最新旅客機の翼や胴体は炭素繊維とプラスチック(炭素繊維強化プラスチック複合材料)で作られています。近年、この炭素繊維強化プラスチック複合材料を3Dプリントする技術開発が進められています。実用化されれば「飛行機を3Dプリンターで作る」ことが可能となります。奇想天外な形の飛行機が誕生するかもしれません。


宇宙の起源を数学で解明する

数学科】 青木 宏樹 准教授

最近になって、私の専門分野である「保型形式」という理論が、素粒子の状態を記述することに利用され始めました。また、宇宙の起源を解明することに対しても、数学を利用する試みが始まっています。物理学の「ミクロとマクロに関する大問題」が、数学者の助けを借りて解明される日は、そう遠くないのかもしれません。


界面活性剤原料の100%植物化

工業化学科※】酒井 秀樹 教授 / 酒井 健一 講師 / 遠藤 健司 助教

わが国では年間約100万トンの界面活性剤が生産されています。界面活性剤は家庭用洗剤や化粧品などに配合されており、私たちの生活に欠かせません。しかし、その原料は主に石油です。50 年後、すべての界面活性剤が植物原料に置き換わっていれば、地球規模での資源枯渇や環境破壊といった問題が解決に向かうでしょう。

※2017年度から工業化学科は先端化学科に名称変更します。

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