入山 聖史准教授 IRIYAMA Satoshi
安全性と利便性を両立した認証技術
指紋や顔の画像などを用いた生体認証技術が普及しつつありますが、生体情報は流出した場合に取り返しがつかないことになりかねません。私が研究している技術は秘匿計算をもとにした認証技術であり、個人の秘密情報を保存するサーバーに復号用の鍵を置かず、暗号化したまま情報処理を行います。
さらに、認証に用いる情報はさまざまな種類(パスワード、ICカード、指紋、顔情報等)に対応しており、シングルサインオンにより異なるサービスとの連携も可能です。これにより、安全で利便性の高い認証をクラウドで提供することが可能となります。
飛躍的に効率を高めた鍵配送アルゴリズム
暗号通信を行う際のマスターキーとなる鍵の配信は最も攻撃にさらされるために、安全とされる鍵長は年々長くなっています。現在の鍵配送アルゴリズムの利用について、2030年問題といわれる限界点が議論されており、安全で効率のよい鍵配送アルゴリズムが求められています。本技術では、従来のものと安全性のクラスを変えることなく、高効率で鍵が配送できる「強非対象公開鍵共有アルゴリズム」を構成し、長い鍵を送る際の計算時間を解決しています。
圧倒的な処理速度を実現する量子計算
量子情報理論の発展とデバイスの開発により量子力学を原理とした計算機の実用化が進められています。本研究室では長年に渡る数理研究をもとに、様々な問題解決を行う量子アルゴリズムの開発と実装を進めており、驚異的な処理速度を持つ次世代型計算アーキテクチャ開発を推進しています。さらに、エンタングルメントの数理解析研究に適応力学を組み合わせた実装を行い、現行の計算機のもとで疑似量子テレポーテーションを実現し、飛躍的に安全性を高めた情報通信ネットワークの開発を行っています。
行動するための思考
私たちの知識は集団によって保持されています。一人の知恵や力では衣食住すらも満足に用意できませんが、社会がそれを実現しています。研究においても同様に一人の力はごくわずかなものですが、周囲の多くの人々の関わりが発展につながっています。皆で情報を共有し、少しずつ多様な知恵を出し合いながら難問に立ち向かい、次の参加者のため知識を集積し知見を分かち合うことで科学は進歩します。我々は学生の皆さんすべての力を求めています。また、皆さんの夢の実現にも我々は助けになるでしょう。認知科学では思考は行動のためにあるといいます。皆さんの新しい思考が生む行動で、社会に関わる愉しさを感じてください。