卒業研究配属について(学内向け情報)

山本研究室では、さまざまな物質の巨視的(マクロな)性質を、理論物理学の手法や計算機シミュレーションに加え、深層学習・機械学習などのデータ駆動型アプローチを用いて、微視的(ミクロな)観点から解明しています。これにより、各物質が示す多彩な物性現象の背後にある普遍性や法則性の解明を目指しています。さらに、これらの研究で得られた知見に基づき、私たちの生活をより豊かで快適にする新機能性材料や高性能デバイスの理論設計にも取り組んでいます。

また、学内外の研究機関・企業・自治体と連携し、化学、材料、環境、天文学、薬学、3Dアニメーションなどの多様な領域において、物理学的アプローチを活用した共同研究も推進しています。

加えて、研究成果を広く社会に発信するための教育活動やアウトリーチ活動にも積極的に取り組んでいます。

卒業研究では、物性物理学の基礎を身に付けることを目的とした輪講を行います。後期にはその知識と技術を総動員して 各々の卒業研究テーマに取り組みます。

前期:テキストの輪講(担当者がスライドを用いて参加者に説明する)
後期:1人または2人一組で1つの研究テーマに取り組み、卒業論文にまとめる

研究室での生活の中で、教員や先輩・同輩と話しながら自然と決まっていくことが多いです。
トップダウンで研究テーマを決めるというより、日頃の会話を通して決まっていくことが多いです。

● 熱エネルギーハーベスティングの物理

自然エネルギーの中でも、私たちの身のまわりに無尽蔵に存在しながら、その有効活用が難しく、科学者たちを悩ませてきたのが「熱」です。つい最近まで、温度差という非平衡環境下における量子輸送の物理は理論的に十分整備されておらず、対症療法的な研究が中心でした。しかし近年では、私たちのグループを含む日本の理論研究グループが世界をリードする形で、この分野の研究を大きく進展させています。

メソスコピック系の⾮平衡量⼦物性

マクロとミクロの中間的なサイズをもつメソスコピック系では、「量子効果」が顕在化するだけでなく、さまざまな物理量の「ゆらぎ」も顕著になります。近年では、単なるノイズと考えられてきた「電流ゆらぎ」の中に、これまで知られていなかった法則や関係性といった物理的情報が含まれていることが明らかになりつつあります。山本研究室では、カーボンナノチューブなどのメソスコピック物質を対象として、「電流ゆらぎ」に秘められた新たな学理の探究を進めています。

● 物質表⾯での⽔のミクロな構造と物性

水は人類にとって最も身近な物質の一つでありながら、いまだに科学的に未解明の性質を多く有する不思議な物質です。山本研究室では、固体表面における水(固液界面)のミクロな構造を、分子動力学シミュレーションやトポロジカルデータ解析を用いて調査し、界面に特有の水和構造からバルクの水へと変遷する様子を世界で初めて明らかにしました。近年では、気液界面の熱力学的安定性に関する研究も進めています。界面の熱力学は、物理学においていまだ発展途上にある研究分野であり、現在注目を集めているトピックです。

● 物性物理学における諸問題

山本研究室では、物性物理学に関するさまざまな課題に取り組んでいます。以下に、最近の卒業研究テーマの一部をご紹介します。
 ・ 近藤効果によるヴィーデマン-フランツ則の破れ
 ・ カイラルCNTによる熱駆動アインシュタイン=ド・ハース効果
 ・ 準結晶の異常比熱: デュロン-プティ則の破れ
 ・ 空間反転対称性の破れた原子層物質のトポロジカル物性
 ・ シミュレーティッドアニーリング法によるデータ駆動型材料設計

● 分野横断研究(エンタメ×物理学, 天⽂×物性,環境問題×物性,科学教育, etc)

【天文 × 物性】
国立天文台と共同で、量産型電波受信機の開発およびそれを用いた観測を行っています。今後は観測に加え、シミュレーション研究の展開も予定しています。

【科学教育(主に教材開発とその実践的応用)
新たな教材を開発し、教育現場で実践的に活用することで、教育効果の調査・研究を行っています。2025年度には、田園調布学園高等部の生徒と共同で教材開発を行い、日本物理学会Jr.セッションにて発表しました。

【環境問題 × 物性】
水質汚染の課題解決に向け、企業や地方自治体と共同で地下水や温泉の水質調査を実施し、有害物質の除去に資する新材料の開発を進めています。

【3DCG × 物理学】
3Dアニメーション制作会社と共同で、物理シミュレーションに基づく3D映像の制作に取り組んでいます。

その他にも色々な卒研テーマがありました

・体温で発電するタケコプターの開発(教材開発)
・陶芸の釉薬の輝きのメカニズム(陶芸家との共同研究)
・煤の形状と吸収スペクトルの関係(鈴鹿墨職人との共同研究)
・墨流しの科学 ー水面の墨液膜の安定性と不安定性ー
・カーボンナノチューブ透明導電膜の伝導特性シミュレーション
・熱効果を取り入れた実寸大のカーボンナノチューブの電子輸送特性
・分子性ナノ細孔中の人工メタンハイドレートのNMRシミュレーション(田所研@化学科との共研)
・FET応用を目的としたグラフェンナノメッシュの最適構造探索
・原子膜材料のフォノンエンジニアリング
・化学修飾されたSiO2表面での水のミクロな構造と濡れ性