| 講演者 | 宮﨑弘安氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) |
| 題目 | モチーフ的ホモトピー論の分岐理論的な一般化について |
| 日時 | 2025年7月16日(水) 16:30 ~17:30 |
| 場所 | 東京理科大学野田キャンパス4号館3階数理科学科セミナー室 |
| 概要 | Morel-Voevodskyにより創始されたモチーフ的ホモトピー論は、位相空間のホモトピー論の代数幾何的な類似とみなせる。その基本的なアイディアは、幾何的対象を位相空間から代数多様体に置き換え、ホモトピー変形のパラメータ空間を閉区間[0,1]からアファイン直線A^1に置き換えることである。このような単純な置き換えにも関わらず、モチーフ的ホモトピー論は代数多様体の様々なコホモロジー(Bettiコホモロジー、代数的ドラームコホモロジー、l-進コホモロジー等)を普遍的に統合する強力な理論として輝かしい成功を収めた。しかしながら、モチーフ的ホモトピー論には、「A^1-ホモトピー不変性」と呼ばれる性質を満たさないコホモロジーの情報を捉えることができないという課題が存在する。これはホモトピーのパラメータとしてA^1を採用することの必然的な帰結である。 近年、上記の制約の克服を目的として、モチーフ的ホモトピー論の一般化がいくつか提案されてきた。本講演では、Morel-Voevodsky流のホモトピー論を概観した後、一般化のひとつとして講演者らが構築した「モジュラス付きホモトピー理論」について解説する。一般化の基本的なアイディアは、代数多様体をモジュラスペアと呼ばれる対象に置き換え、アファイン直線をモジュラスペアの素朴な例である射影直線と無限遠点のペア(P^1, ∞)に置き換えることである(代数多様体はモジュラスペアの特殊例とみなせる)。この一般化により、Hodge-Wittコホモロジーや不分岐コホモロジーといった、A^1-ホモトピー不変性を満たさない様々なコホモロジー(およびそれらの上に定まる分岐理論的なフィルトレーション)の情報を捉えられることを説明する。また、他の一般化の試みとの関係も述べる。本講演の内容は小泉淳之介氏、齋藤秀司氏との共同研究に基づく。 |
| 共催 | 先端的代数学融合研究部門 野田代数セミナー,MaSCE Seminar |
