2026.07.21 修了生が紹介するMOTの講義

専門科目「グローバル技術経営論」(岸本准教授)|第5回:【雇用構造の技術への影響】&【開発機能の現地化】~具体化と抽象化の往復による腹落ちする講義~

【2026年夏学期】
電車を降りた瞬間、むっとした湿気が肌を包み込む。その懐かしい感覚は、七月初旬の神楽坂ならではの風景である。蒸し暑さとは裏腹に、これから始まる理科大大学院MOTでも屈指の人気を誇る講義への期待が胸を満たし、教室へ向かう足取りは自然と軽くなっていた。

今回は、岸本先生(※1,※2)の「グローバル技術経営論」の魅力について紹介したい。 

本講義では、日本企業の海外展開や国際経営に関わる実務家にとって有益な理論や知識を学ぶことができる。しかし、その価値は国際業務に携わる人だけにとどまらない。組織運営や事業戦略、さらには日々の実務にも応用できる示唆に富んでおり、多くの社会人学生にとって学びの幅を広げてくれる点も大きな魅力である。

講義は大きく三つの段階で進められる。 
第一段階では、岸本先生がその日のテーマや理論の背景を丁寧に説明される。議論の前提となる知識や視点が整理されることで、受講生は安心して思考を深めることができる活発な議論へ向けた土台づくりとして非常に機能していると感じた。

続く第二段階では、学生の疑問点や事前課題を題材とした対話の時間が始まる。こここそが岸本先生の講義の大きな特徴である。学生一人ひとりが試行錯誤を重ねて作成した事前提出課題が講義の中心に据えられ、それをもとに先生と学生、あるいは学生同士の議論が展開される。

実際、この日の講義前半だけでも数十名の学生が、自らの業務経験や調査・分析の結果について自信を持って発言していた。教室には、多様な意見を互いに受け止め、それを学びへと昇華しようとする包摂的な雰囲気が満ちている。発言者だけでなく、聞き手もまた主体的に学びに参加していることが伝わってきた。

そして第三段階では、学生の具体的な経験や考察を出発点に、岸本先生と受講生との議論を通じて、それらをより抽象度の高い理論へと昇華していく。同時に、参加者一人ひとりがその理論を自らの業務や経験へと当てはめ直すことで、具体化と抽象化の往復運動が自然に生まれる。

このプロセスによって、学びは単なる知識の理解に留まらず、「腹落ちした理解」へと変わっていく。理論が実務と結びつき、実感を伴って定着していく点こそ、本講義の大きな価値なのだろう。

さらに印象的だったのは、岸本先生が常に学生の立場に寄り添いながら講義を進めていることである。受講生が安心して発言し、考えを深められるような工夫が随所に施されており、その結果として教室全体に高い一体感が生まれている。

そこにあるのは、ただ競争を繰り広げるだけの学びの場ではない。初夏の木曜日、蒸し暑い夕方という疲労の蓄積しやすい時間帯を共有しながらも、それぞれが互いを尊重し、高め合おうとする空気が流れている。知的刺激と温かな連帯感が共存するその雰囲気こそ、岸本先生の講義が多くの社会人学生を惹きつける理由の一つなのかもしれない。

岸本先生のグローバル技術経営論は、理論を学ぶ場であると同時に、多様な実務家が互いの経験を持ち寄り、新たな気づきを創り出す知的共創の場でもある。神楽坂の蒸し暑い夕暮れとともに始まった学びは、帰路につく頃には新たな視点と明日への活力へと変わっていた。

執筆:2025年度修了生(製造業勤務)

※1:岸本准教授 https://dept.tus.ac.jp/mot/facuity/taichikishimoto/
※2:岸本准教授ホームページ https://www.taichikishimoto.work/