2023年地球電磁気・地球惑星圏学会総会において木村研大学院生が学生発表賞(オーロラメダル)を受賞

2023年地球電磁気・地球惑星圏学会総会において木村研大学院生が学生発表賞(オーロラメダル)を受賞

2023年地球電磁気・地球惑星圏学会総会において本学大学院生が学生発表賞(オーロラメダル)を受賞しました。

受賞者
理学研究科 物理学専攻 修士課程2年 星野 亮
指導教員
理学部第一部 物理学科 准教授 木村 智樹
受賞題目
塩化ナトリウムへのプラズマ照射実験と物理化学モデリングによるエウロパの希薄大気生成と表層組成の解明
概要
木星の氷衛星であるエウロパは、内部海を持つことから生命の存在可能性が示唆されている天体の1つである。その内部海と表層の間では水や塩などの物質の輸送が行われている可能性があり、エウロパ表層の物質組成等の理解は内部海環境の理解につながる。エウロパでは、宇宙空間からのプラズマや紫外線などが表層物質に照射され、宇宙風化が起こる。木星氷衛星で宇宙風化の主要因とされるプラズマは表層物質をスパッタリングしてエウロパの希薄大気を生成する一方、表層物質の組成は変化すると考えられる。しかし、その一連の過程は物理・化学的に複雑で、スパッタリングによる希薄大気生成と表層風化に伴う組成の変化について、定量的な関連付けは未だなされていない。

そこで本研究では、エウロパ表層候補物質であるNaClに宇宙プラズマを模した水素等を照射し、初めてエウロパ環境におけるスパッタリングと表層物質の組成変化を同時に再現した。その結果、スパッタリングによるNa原子の放出率を得た。この放出率を制約条件とした3次元希薄大気モデリング[Leblanc et al., 2002]を行い、エウロパ周囲のNa希薄大気の総量を計算した。その結果、地上望遠鏡観測によるNa大気の総量[Brown and Hill 1996]の半分程度が、表層NaCl起源であることがわかった。これは、表層物質に、NaCl以外のNa源(NaSO4等)が有意に存在することを示唆しており、内部海の組成を制約する重要な情報が得られたことに相当する。

受賞者講評
エウロパの内部海における生命存在可能性を議論するための研究である。エウロパの表層環境を実験的に再現する工夫や、放出物質の定量的な測定方法の確立に向けた工夫がなされていた。さらにシミュレーションや他の地上観測の結果と組み合わせることで、実験結果の科学的な解釈についても十分に考察されていた。発表は丁寧に準備されたことが伝わるものであった。測定手法やパラメタ設定において、先行研究と仮定との切り分けや根拠が明確であり、きちんと理解した上で作業していることが伝わってきた。また、大枠の科学目標の中における自身の研究の立ち位置や貢献に関する説明も明確で、全体としてのまとまりの良さを感じた。セッション進行のイレギュラーにより質疑応答の時間が長く取られたが、すべての質疑に対して的を射た回答と議論が行われた点も、普段の研究への取り組みの主体性を示すものといえる。
受賞日
2023年11月12日

大学本部からのウェブリリース

関連リンク
SGEPSS 地球電磁気・地球惑星圏学会
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