学ぶのに遅すぎることはない、人生のチャンスを逃がさないで!
- 学生
- 蜂谷宏子さん 理学部第二部化学科1年生
理学部第二部化学科一年、蜂谷宏子です。
今年、社会人特別選抜で東京理科大に入学し、8月に第十回空想科學小説コンテストにて第一席夢枕獏賞を受賞しました。受験や受賞の経緯、理学部第二部の魅力について記してみたいと思います。しばしお付き合いください。
夢枕獏賞は「陰陽師」で知られる作家の夢枕獏さんを審査委員長として、受賞作品が細かな選評とともにSF同人誌「SFファンジン」誌上に掲載されます。プロアマ問わず何度でも応募でき、第一席には副賞としてチャンピオンベルトが贈られます。翌年にはベルトをかけたタイトル防衛戦に臨まなければなりません。格闘技がお好きな夢枕獏さんらしい、文学賞史上初のチャンピオンベルト制です。
今年の締め切りは5月15日。授業を受け始めて1か月ほどの時期でした。
<受験の経緯>
私が東京理科大学を受験したのは、かつて入学を希望し、さまざまな理由から受験そのものを断念せざるを得なかったことをずっと心の中に残していたためです。
憧れの人はキュリー夫人。そんな子供時代の夢がやがて、生物はなぜ老化するのか、どんなメカニズムでどんな物質が関係しているのかを研究してみたい、という夢になりました。昭和の高校生です。その夢を断腸の思いで諦めねばならず、とてもつらい人生でした。
数年前、勤務先で異動になり、通勤の乗換駅に東京理科大学があったことで、複雑な思いを抱きました。それを母に打ち明けたところ、今からでも受けてみたら?と思いがけない言葉をかけられました。調べてみると理学部第二部には社会人特別選抜がありました。なんてすばらしい制度だろうと思い、受験を決意しました。
長く理学とは全くかけ離れた職に就いており、職場でも「なぜ今更理科大に?」と言われましたが、やる以上は応援するといってもらえ、合格。仕事をしながらの通学は大変ですが、夢にまで見た理科大生となった喜びに勝るものはありません。
毎日楽しそうに大学に通っているとお母さんも喜んでらしたわよ、と母の友人からも声をかけてもらいました。そんな中、原稿の締め切りが…。
<創作から受賞へ至る日々>
ゴールデンウィークを返上して、大学の課題に勉強と原稿書き。充実しているとはいえ、なかなかにハードでした。私は過去に夢枕獏賞を2度受賞しています。特に前回受賞のタイトルホルダーだったので、防衛戦に投稿しなければなりません。大学の授業は楽しいけれど新しい知識を吸収するのが大変だし、その上で創作。帰宅すると23時近くの日もあります。通勤に1時間半かかるので5時に起きて出勤の支度。通勤電車の中でスマートフォンに原稿を書き込む、などということもありました。
その甲斐あって夢枕獏賞受賞となりました。知らせがなかなか来なくてやきもき…受賞を聞いた時はやった!タイトル防衛!と飛び上がりましたが、また来年、防衛戦に挑戦しなければなりません。
もともと創作は好きで、高校生のころから文学作品を読むだけでなく、自分でも書いてみたりしていました。理系志望ということで科学的なことへの興味も人一倍あり、SF小説のファンでもありました。SFというと科学的な知識がないと楽しめないのではと敬遠する方もいるので、そのような方にも楽しんでもらえ、気がつくとSFが読めた、面白かった、と思ってもらえるような作品を心がけています。もちろんいい加減なことは書けませんから、作品の科学的な裏付けについて自信を持てるように学びたい、そういう気持ちもあります。が、それよりも何よりも、純粋に化学、生物学が好きで学んでいます。
<理学部第二部で感じたこと>
理学部第二部には、さまざまな学生がいます。同じように一度社会に出てからやはり学びたいと入学してきた友人もできました。年の近い方から、自分の子供のような年齢の方まで、同じ理科大生というつながりです。もちろん卒業後の進路を見据えて頑張ることは言うまでもありませんが、私のように社会人として仕事をしながら、それでもどうしても学びたいものがある、と挑戦する学生も少なくないのです。
勤務の都合で、やりたいものだけをやる、という形を取りながら、教養科目で学んだ専門的な知識も創作に生かしていければと思っています。
授業で学んだ、人生の早い時期に理系文系と分けられているのは日本だけ、ということも大いにうなずけることでした。 高校時代、理系受験クラスに籍を置き、授業の選択で数Ⅲを取るか地学と古文(源氏物語)を取るかという選択を迫られ、とても煩悶したことを覚えています。これからの時代は、理系文系と分けることなく学ぶことが大切という世の潮流も出てきました。それに先駆けるように、理学を学びながら、文学について、心理学について、深く学べる今の環境にとても感謝しています。
夢枕獏賞の報告を心待ちにしていた母が、5月末、急逝いたしました。掃除でも洗濯でも、できることは何でもやって応援するから、大学頑張りなさい。そう言ってくれていた母でした。そんな状況で授業の出席もままならぬこともありましたが、励ましや、受けられなかった授業についての質問への細やかなお返事など、本当に理学部第二部の先生方の温かさには感謝しかありません。
実は理学部第二部は二回受験しました。 どちらも社会人特別選抜で、一度目は2021年。コロナ禍真っ只中で面接試験はZOOMによるリモートでした。面接官の先生方はとてもとても親身で、理科大の化学には物理の知識が必要なことや働きながら卒業を目指すなら長期履修制度があるということなどを丁寧にお話しくださいました。受験生のことをこんなに親身に考えてくださる、なんでいい大学だろうと感動しました。 そして合格。 この時は直後に仕事で大きな改変があり、熟慮の末入学断念に至りました。
合格したことを記念にこれから頑張って生きていこう…と思いましたが、やはりどうしても諦められず、今年2023年に再受験。今度はリモートではなく神楽坂キャンパスでの試験でした。緊張の中「一度合格しているね」「二度手間になっちゃったね」と、面接官の先生方から気さくな言葉もお掛けいただき、終始和やかな雰囲気でした。
そして今、理科大生としての日々を送っています。
勤務の都合で一部関門科目と言われる進級に必須の授業が取れないのですが、クラス変更の対応や、長期計画で翌年に取れなかった授業を取る(一年生は三回まで在籍可能)など、学び続けるためのいろいろな方法があります。仕事をしながら、昼間の時間は別のことに使いながら、大学生活を目指す方々には受験を検討してほしいと思います。女の子だから、夜だから、そんな理由で反対されることもあるかと思います。令和の今でも、女子学生が理系に行くことを回りが理解をしてくれないという話も聞きます。理学部第二部には、女子学生もたくさんいます。自分が本当にやりたいことに取り組んでいる姿は生き生きとしています。
人生の選択は限りなく続きます。その中で、本当に自分がやりたいことを選べる機会はそうそうないかもしれません。そのチャンスをどうか逃がさずに掴んでください。