二部数学科の社会人学生および卒業生(ともに公認会計士)との座談会を行いました
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- 牧原 貴宣さん(社会人学生・4年生)(右)、若松 優都さん(2025年3月卒業)(左)、佐藤 隆夫教授(中央) 理学部第二部数学科
二部数学科の社会人学生および卒業生(ともに公認会計士)との座談会を行いました。以下は本文からの抜粋です。詳細は是非こちらをご一読ください。
【数学×公認会計士】
牧原 貴宣さん:社会人学生,4年生.2000年に公認会計士試験に合格し,監査法人(カナダへ4年間駐在),欧州系の投資銀行を経て,現在はスタートアップ企業のCFO兼管理部長.
若松 優都さん:2025年3月卒業.2024年から監査法人で非常勤として勤務し,2025年に公認会計士二次試験に合格.現在は常勤として勤務中.
【公認会計士はどんな職業?】
牧原:一言で言えば「資本市場の番人」ですが,実務的には「企業の経済活動を会計というルールに従って財務諸表に翻訳する際に,その正しさを第三者の立場から証明する仕事」です.数字を扱う仕事ですが,単なる計算チェックではありません.ビジネスの現場で起きている「事実」を正確に把握し,法律や基準に照らして適正に財務諸表に反映されているかを判断する,極めて論理的かつ法的な判断力が求められる職業です.
若松:会計をする上で見積りという要素があります.経営者が市場をどう見ているかという主観的な要素が入ってくると,会計士も解釈をしっかり行う必要があると思います.
【数学科と公認会計士の共通点】
佐藤:公認会計士には,「客観的に公正な判断ができる」,「根気強さ」,そして「論理的思考力」が求められるとwebにも書かれているのですが,これらはまさに数学を学んで身につく能力そのもので,改めて驚きました.
牧原:非常に鋭いご指摘だと思います.「客観的で公正な判断」,「論理的思考力」,「根気強さ」が求められるとされている点は,佐藤先生のゼミでも経験しましたが,まさに数学の証明を組み立てるプロセスと酷似していると言えます.
牧原:これからの時代,会計士だけでなく社会人が数学科で学ぶ,あるいは理系の学生が会計士を目指す動きはもっと増えてもいいのかなと考えています.理由は単純で,現代のビジネス、特に私が身を置くスタートアップや金融の世界では,AIやデリバティブなど「高度な数学」で記述されたプロダクトや技術が利益の源泉になっていることがあるからです.それらを監査したり評価したりする会計士が,数学という「言語」を理解できないのでは,そのビジネスの本質的な意味を理解したうえでの仕事ができなくなるのかもしれません.実際に,AI関係の仕事をする際に「ハウスドルフ空間」などという用語が出てきてびっくりしたことがありました.技術者と話すとき『数学』という共通言語があるだけで信頼関係が構築しやすくなります.専門用語を使うことができれば一言で通じます.つまり,コミュニケーションを行う上で大きなメリットになります.会計士が数学を学ぶことで『技術がわかる経営陣』になれますし,理系のバックグラウンドを持つ方が会計士になれば『財務数字に強いだけの会計士』を遥かに凌駕する存在になれます.この両者の行き来が活発になれば,日本のビジネスはもっと面白くなるはずです.
若松:私は数学科のゼミで培った,テキストに向き合う力は大事かと思いました.会計士として仕事をする際に,会計基準や監査基準などのルールブックがあり,そこに書いてある文言をしっかり使いこなせるように自分の中に落とし込むことが前提条件になるわけですが,それを行う上で,数学書をきちんと読み進める力があればスムーズにできるのかなと思います.
【理学部第二部に通って良かったメリット】
牧原:やはり,『本物の数学を,社会人のペースで無理なく学べる仕組み』が完成されていることです.まず,1部(昼間部)と全く同じ内容を学べるため,学位の質に妥協がありません.その上で、社会人にとって非常にありがたかったのが『長期履修制度』と『学費の安さ』です.二部は元々の学費もリーズナブルですが,長期履修制度を使えば,例えば4年分の授業料で6年かけて学ぶといった計画も立てられます.仕事が繁忙期の年は科目を減らし,余裕がある年に集中するなど,キャリアの状況に合わせて学習計画を柔軟にデザインできる.この制度があったおかげで,『仕事が忙しいから中退する』というリスクを回避し,精神的な余裕を持って学習を継続できました.また,土曜日に質問コーナーも設置されていたため,大学院生と交流することで理解出来ないことを気軽に質問できましたし,その論点のモチベーション等も含めて理解することが出来ました.やはり,講義で一度聞いただけではよくわからないことも多く,例えば「カーネルって結局何が言いたいんですか?これって何でなんでしょうか?」など素朴な疑問を気軽に質問できる環境はすごく良かったです.私以外の社会人も良く利用されていました.
そして何より,実務の課題を持った状態でアカデミックな場に身を置き,自分なりの『理論と実践の往復』がリアルタイムでできたこと.『質の高い学び』と『継続できる環境』の両方が揃っていたことが、最大のメリットでした.
若松:CPAという公認会計士になるための予備校に通っていたのですが,たまたま大学に近かったので,アクセスが良いというのは大きなメリットでした.
【既に活躍されている公認会計士に本学科を勧めるとしたら?】
牧原:「過去の記録」にとどまらず「未来の予測」に興味があるなら,数学を学ぶべきだと思います. 会計は基本的に「過去の結果」を記録するものですが,ファイナンスや経営戦略は「未来」を扱います.未来は不確実であり,その不確実性を扱う道具こそが数学(確率・統計)です.また、昨今のAIブームやデータドリブン経営の中で,会計士としての付加価値を「データの真正性の保証」や「アルゴリズム監査」といった領域に広げたいのであれば,数学科での本質的な学びは陳腐化しない考え方を手に入れるという意味で良い自己投資になるように思います.昨今のAI・データドリブン経営の潮流において,LLMや機械学習の根幹にあるのは,線形代数,微積分,確率・統計といった普遍的な数学です.これらを本質的に理解することで,AIが出した結論がどういう過程を経て出力されているかを理解することで,その「妥当性」や「限界」を理解できる会計士になれるかもしれません.
若松:文系出身でも本気で数学をやりたいのであれば理学部第二部数学科で学んで卒業できると思います.数学基礎や数学概論などを活用すれば,文系出身者にも配慮があるかと思いましたが,数IIIを全く知らないという状況ではきついかと思うので,不安な方は高校数学を復習しておくとよいと思います.


























