「数字で議論できるようになった」――働きながら理学を学んだ社会人卒業生インタビュー
- OB・OG
- 大手インフラ関連企業で働くT. A.さん 理学部第二部物理学科
高校では物理を履修しておらず、数学も高校数学2Bまで。ITスキルにも不安があった社会人が、働きながら理学部第二部物理学科で学び、そこで得た力を現在はシステム関連部署で活かしています。大手インフラ関連企業で働くT. A.さんは、理学部第二部(理二)での学びを通じて、物事を構造として捉える力、データを分析し数字で議論する力を身につけました。本記事では、理二に入学した動機、在学中の困難、仕事に活きた学び、卒業後のキャリアの変化について伺いました。
Q1. 社会人になってから、なぜ理二物理学科で学ぼうと思ったのですか。
もともと宇宙に興味があり、高校時代は天文部に所属していました。その後、読書を通じて相対性理論やブラックホールを知り、「いつか自分もブラックホールを数式で理解してみたい」と思うようになりました。
社会人になってから独学で数学や物理を学ぼうとしましたが、高校物理は未履修で、数学も十分に学び切れていなかったため、すぐに限界を感じました。そのとき、日本で唯一、夜間に理学を学べる理学部第二部の存在を知りました。働きながら、基礎から体系的に数学と物理を学べることが、理学部第二部物理学科を選んだ大きな決め手でした。
Q2. 入学前や在学中に、不安や大変だったことはありましたか。
入学前に最も不安だったのは数学です。高校では数学2Bまでの履修だったため、大学数学についていけるのか、大きな不安がありました。実際、入学後も最初の頃は「物理を学ぶ」というより、数学を学ぶことに必死でした。
それでも、学び続けるうちに、それまで暗号のように見えていた数式が、物理現象を表す言葉のように感じられる瞬間がありました。「数式を理解するとはこういうことなのか」と実感できたことは、大きな自信につながりました。
仕事との両立も簡単ではありませんでした。フルタイムで勤務しながら授業に出席し、実験レポートや試験に取り組む日々はかなりの努力が必要でした。支えになったのは、同期の社会人学生、TA、先生方の存在です。理解が追いつかない部分を相談できたことは、大きな助けになりました。
現在の理二で、社会人学生同士がつながる仕組みや相談しやすい環境が整えられていることは、これから学ぶ方にとって大きな支えになると思います。
Q3. 実験レポートや誤差解析は、仕事にどのように活きていますか。
物理学科で身についた力の中で、仕事に最も活きていると感じるのは、「物事の構造を理解する力」と「データを分析し、数字で議論する力」です。
物理学科の授業では、なぜその式になるのか、現象の背後で何が起きているのかを考える機会が多くありました。また、実験レポートでは、測定結果を整理し、誤差を評価し、理論値との差がどこから生じるのかを考えます。結果だけを見るのではなく、その結果を生み出している要因を分析する。この考え方は、業務改善に取り組む際にもそのまま活きました。
業務改善を担当したときには、各工程の処理時間や発生件数を数値化し、どの工程が全体に大きな影響を与えているのかを分析しました。そのうえで、改善効果の大きい業務から優先的に取り組み、数字やグラフを使って上司や現場担当者に説明しました。
入学前は感覚的な説明が多かったように思います。現在は、「どの程度の工数が発生しているのか」「改善によってどの程度の効果が見込めるのか」を、データを示しながら説明するようになりました。数字を共通の根拠として議論できるようになったことは大きな変化です。
Q4. 卒業後のキャリアには、どのような変化がありましたか。
在学中に取り組んだ業務改善や業務ツールの活用経験も後押しとなり、卒業後は希望していたシステム関連部署で働く機会を得ました。理二で培った定量的分析力、構造理解力、論理的思考力は、キャリア形成に大きく寄与したと感じています。
現在の業務では、設計書を読みながら、システムの仕組みやデータの流れを理解する場面があります。その際、個々の機能を断片的に捉えるのではなく、システム全体の中でどのような役割を果たしているのか、どのような入力を受け、どのような処理を経て出力するのかを意識しています。
生成AIによってコード作成のハードルが下がる時代でも、「何を実現したいのか」を整理し、要件を定義する力は依然として重要です。その土台にも、理二で培った構造理解力や論理的思考力が活きていると感じています。
Q5. 社会人として理二を目指す方へ、伝えたいことはありますか。
働きながら学ぶことは、決して簡単ではありません。仕事との両立には時間も体力も必要ですし、学費もかかります。ただ、その大変さを理解したうえで、本当に理学を学びたいという気持ちがあるなら、ぜひ挑戦してみてほしいです。
私自身、理二に入学したきっかけは、「ブラックホールを数式で理解したい」という純粋な興味でした。しかし、今振り返ると、理二で得られた価値はそれだけではありませんでした。
理二での学びは、論理的思考力、分析力、構造理解力といった、仕事にも活かせる力を育ててくれました。また、学び続ける習慣や、新しいことに挑戦する自信も与えてくれました。
理学を学びたい気持ちはあるけれど、知的好奇心を満たす以外にどんな価値があるのだろう、と迷っている方には、想像している以上の価値があるかもしれません、と伝えたいです。少なくとも私にとって、理二での学びは、物理を学ぶ場であると同時に、自分自身の可能性を広げてくれた大切な経験でした。
理学部第二部より
現在、理学部第二部では、社会人学生が学びやすい環境づくりにも取り組んでいます。一部科目でのオンライン受講対応、仕事都合に配慮した追試験対応、年度はじめの社会人学生オリエンテーション・交流会、オンライン上で社会人学生同士が情報交換できる「社会人学生交流・支援室」やメンター制度の導入など、社会人学生が学び続けやすい仕組みを少しずつ整えています。


























