東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

理工学部 理工学研究科

2023年4月より「創域理工学部」へ名称変更

「創域」が、人との出会いを広げ、研究の喜びを大きくする-電気電子情報工学科・片山昇准教授に聞くー

「誰もやったことがないこと」の先へ行く楽しさを。「創域」を意識することの利点を、さまざまな角度から語って下さいました。

片岡准教授と学生

片山昇准教授は、燃料電池や太陽電池など、エネルギーに関連する複数の領域で新たな技術の開発を進めています。社会に直接的に役に立つ研究が多く、そのそれぞれが、異分野の研究者や企業との共同研究の形で進められています。「他の人とともに研究をすることで、得られる喜びは2倍にも3倍にもなる――」。「創域」を意識することの利点を、さまざまな角度から語って下さいました。

片山昇(かたやま のぼる) 東京理科大学理工学部電気電子情報工学科卒業、同大学大学院理工学研究科 電気工学専攻博士課程 修了。博士(工学)。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科 助教、同講師を経て、2020年より同准教授。専門は、エネルギー学。

エネルギー関連のさまざまな課題の解決を目指して

――先生のご研究の概要を教えてください。

片山:私たちの研究室では現在、エネルギーに関連した複数のテーマを並行して研究しています。いま取り組んでいるのは主に、燃料電池、水素吸蔵合金、エネルギーデバイス診断、エネルギーマネジメントの4つです。それぞれ、学内の他の先生や企業との共同研究という形で進めています。テーマごとに、目の前ある課題に対して、それを解決するためにどうすればいいかを探っていくというアプローチをとっています。自分たちが持っているいくつかの技術をとっかかりとして、他の研究者と協力しながらいままでになかったようなシステムを構築して問題解決を目指すという感じの研究です。

片山准教授の談笑姿

――なるほど。それぞれの研究ごとに明確な目的があるのですね。その内容をさらに詳しく教えてください。

片山:たとえば水素吸蔵合金というのは、自身の1000倍ほどの体積の水素を取り込むことができる合金で、その基礎研究を私の研究室でやっています。この合金には、水素を取り込むだけでなく、水素中に含まれる不純物を取り除けるという性質もあり、そのことをある時、経営工学科の堂脇清志先生にお話ししたところ、興味を持たれました。堂脇先生は、バイオマスから水素を分離してそれを燃料として利用するための研究をされているのですが、水素吸蔵合金を利用すれば、分離した水素を貯めるとともに純度を高められるのではないかと考えたのです。そしていろんな側面を調べていく中で、実際に使えそうだということになり、一緒に研究することになりました。以来、かれこれ10年ほど共同研究をしています。

――片山先生が基礎研究として行ってきたことが、分野の異なる研究を進展させる力になったのですね。

片山:そう言えるかもしれません。さらに堂脇先生は、バイオマスから作った水素を燃料電池として利用して、自転車のシェアリングシステムを構築しようともされています。私はもともとの専門が電気のため、その自転車のシェアリングシステムにおいてどのように電気をマネジメントするのがよいかを考える研究もいま、堂脇先生と共同で行っています。つまり、シェアする自転車に搭載するのに最適な電源を探る研究です。燃料電池は、長時間電力を出し続けるのは得意なのですが、瞬発的な電力は出せません。そこで、スーパーキャパシタという、瞬間的にはとても大きな電力を出せるけれど長時間は持たない電池と組み合わせ、ハイブリッド化した電源を作るべく研究を進めています。これは、燃料電池に関する研究の一例でもあります。

片山准教授が説明をしている姿

太陽電池に関する新技術を企業と共同で研究する

――燃料電池、水素吸蔵合金の2つのテーマを、堂脇先生と共同研究されているとのこと。ではあとの2つ、エネルギーデバイス診断、エネルギーマネジメントの方はいかがでしょうか。

片山:エネルギーデバイス診断とエネルギーマネジメントの2つは、主に企業と進めています。具体的な研究内容はそれぞれのテーマごとに複数あるのですが、エネルギーデバイス診断については、たとえば、東京ガスさんと共同開発して昨年発表した、太陽光パネルの劣化診断をするシステムがあります。私の研究室で開発した「交流インピーダンス法」という、電気の流れにくさを測る方法によって、劣化具合が正常の範囲内かどうかを識別するシステムです。一方、エネルギーマネジメントについては、一つ例を挙げると、太陽電池の電力をできるだけ有効に活用するための仕組みを作る研究を行っています。太陽電池で得られる電力は、自分で使うだけではなくて売ることもできます。その価格が昼と夜とで違うので、太陽電池で得た電力をいつ売って、いつ発電所の電気を買うと一番得かというのがあるわけです。もう何年かすると“ダイナミックプライシング”と言って、日や時間によって電力価格が変わるようになるはずで、そうすると最適な売り買いのタイミングはより複雑化します。その最適な解を、深層強化学習、つまりAIを使って自動的に見つけるという研究をしています。

――両研究とも、いままさに社会で必要とされている内容ですね。ところで、大学内での共同研究と企業との共同研究では、どのような違いがあるのでしょうか。

片山:私たちの場合、大まかには、大学内で行う共同研究は基礎研究寄りで、企業と進めているものは応用研究寄り、とわけることができます。その両方をバランスよくやるようにしていますが、研究内容は互いにつながってもいるので、一つの研究で得た知見が他に活かされることもあります。たとえば、太陽電池の電力の最適な売買方法を求めるシステムがうまくできれば、先ほどお話しした、自転車のシェアリングシステムにおける燃料電池とスーパーキャパシタのハイブリッド電源にも応用できそうなんです。燃料電池とスーパーキャパシタをどういうタイミングで切り替えれば最も効率よく自転車が走るかの解も、電力の最適な売買の方法と同じ原理で求められるはずだと考えています。

横のつながりが、新たな研究の可能性を開く

――片山先生は、大学、企業と、さまざまな研究者の方と共同で研究されているので、「創域」という言葉ととても親和性が高いように感じています。片山先生の中で、創域という言葉に対して何か意識されていることはありますでしょうか。

片山:創域という意識を持つことは、まず教育の面で大きな意味を持つと感じています。いま、研究分野は専門性が高まっている反面、とても細分化されてしまっています。隣の研究室が何をしているかわからないどころか、同じ研究室内でも別の学生が何をしているかわからないということが起きている状況です。その一方、どんな製品でもサービスでも、色々な技術の集合体です。他の専門の人とコミュニケーションがとれないと、自分の技術も生かせません。それゆえに学生には、自分の技術を他の人に伝える力や、逆に、自分の専門外のことでも理解する力を身に付けほしいと思っています。そういう流れの中で、理工学部が、学部として「創域」という言葉を掲げることは、学生の意識を変える上でよいことだと感じます。

片山准教授と学生たちとの談笑の様子

――創域というコンセプトの基盤として、2017年に理工学部で横断型コースが始まったことがあります。横断型コースの導入は、教育面での効果はあったと感じていますか。

片山:とても大きいと思います。横断型コースが始まってから、自分自身いろんな学生とコミュニケーションを取れるようになりました。通常、教員は自分の研究室の学生としか話をしないため、学科の中でも話したことがない学生がいっぱいいるし、ましてや他の学科の学生なんてなかなか知る機会がありません。それは学生にとって同じです。ところが横断型コースが始まったことで、研究室や専攻を超えた研究発表はもちろん、他の研究室を実際に訪問して見学する「ラボツアー」のような交流も気軽にできるようになりました。すると学生も、他の研究室の教員や学生が身近になりますよね。結果、いまは他の研究室の学生が私のところに相談にくることもありますし、逆に私の研究室の学生が、自分の研究室内では解決できない問題にぶつかった時に、私も「じゃあ、あの先生に聞いてみたら」って背中を押すこともできるわけです。

――なるほど。そういった横のつながりは、研究を思わぬ新しい展開に導いたりもしそうですね。

片山:そうなんです。先日も私が所属しているエネルギー・環境コースの先生から、私の研究室では燃料電池の研究に使っている技術を他の研究に使ってみたいというご連絡をいただきました。まだ詳しいお話はできませんが,まさに横断型コースによって始まった新たな研究と言えますね。これからどのように展開していくか、楽しみです。

「誰もやったことがないこと」の先へ行く楽しさを

――創域を意識した分野横断的な交流が、学内でさまざまな可能性を広げているのを感じます。そのような雰囲気は、企業と共同研究を行う上でも何か影響があったりするのでしょうか。

片山:いろいろあるように感じます。企業との共同研究には、たいてい学生も参加しますが、学生が他の分野の人とのコラボレーションに慣れていると、企業とのやり取りもうまくいく場合が多いんですよね。専門も年齢もバックグラウンドも違う方とコミュニケーションをとりながら研究を進めないといけない中で、やはり日ごろから、他の分野の学生や教員と接していることは大きく役立ちます。また最近では、共同研究をしている会社の方を呼んで学生とパネルディスカッションをするようなイベントも、横断型コースとして行っています。企業の方にとっても、大学の教員、学生にとっても、新たなつながりを作る機会になるのでとても有意義だと感じています。

片岡准教授のワンショット画像

――横のつながりを作っていくことの大事さが改めて実感できるお話でした。最後に、これから研究者を目指す人へメッセージなどがありましたら、お願いします。

片山:研究をしていてよく感じるのは、どんなテーマでも突き詰めてやっていくと、「ここから先は人類史上が誰もやったことがない」というところに、わりとすぐ辿り着けるということです。大学院生、あるいは学部の四年生でも、そういうところに辿りつくことは、決して稀ではありません。そうして、「この先のことは教科書にも書いてないし論文にも書かれてなく、誰も知らない。自分が実験してみて初めて明らかになるんだ」というところまで来て、自分の手で新しいことを明らかにしたり、新しいものを開発したりするというのは本当に楽しいです。その上、一緒に研究をしている人たちとそういうところまで到達できると、喜びは2倍にも3倍にもなりますよね。創域という環境の中で、その喜びを多くの学生に味わってもらいたいなと思っています。

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