東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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汗や尿で発電するウェアラブルデバイスで、手軽に身体状態が知れる時代に―先端化学科・四反田功准教授に聞く―

汗や尿をエネルギー源として発電する「バイオ燃料電池」の技術が、近年広がってきました。 四反田功准教授に、この技術が持つ可能性、さらに、創域が生み出す未来について聞きました。

四反田准教授の画像

汗や尿をエネルギー源として発電する「バイオ燃料電池」の技術が、近年広がってきました。四反田功准教授は、その技術を利用したセンサーを作り、自ら発電しながら健康状態を検知するウェアラブルデバイスの開発を進めています。尿が出たことを通知してくれるおむつや、体に貼るだけで疲労度がわかるセンサーなど、手軽に身体の状態を教えてくれるデバイスが生まれつつあります。そしてそうした開発を進めるカギとなっているのが、四反田准教授自身の”創域的”側面のようです。この技術が持つ可能性、さらに、創域が生み出す未来について、聞きました。

四反田功(したんだ いさお) 東京理科大学理工学部工業化学科卒業、東京大学工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。カリフォルニア大学サンディエゴ校 在外研究員、東京理科大学理工学部 講師などを経て、2020年4月より現職。

自ら発電しながら体内の物質を測定できるバイオ燃料電池

――四反田先生の現在の研究の概要を教えてください。

私は現在、主にバイオセンサーやバイオ燃料電池の研究をしています。

バイオセンサーというのは、生物起源の素材を利用した、特定の物質を検知するためのセンサーのことです。たとえば新型コロナウィルスで広く名前が知られるようになった「抗原検査」がその一つです。これは、検査したいウイルスの「抗原」(そのウイルスが持つ特有のタンパク質)だけを選択的に認識するタンパク質をセンサーとして利用して、体内にウイルスがあるかないかを調べるものです。この場合、このウイルスを倒すために作られるタンパク質である「抗体」が、センサーになります。一方、私たちの研究室では、体内にある酵素をセンサーとして利用して、いろいろな物質を検知、計測する手法を研究しています。

酵素は、特定の物質の化学反応を促進させる役割を果たします。たとえば、グルコース(ブドウ糖)の化学反応を促進させる酵素(グルコースオキシダーゼ)であれば、その酵素とグルコースが出会うと、グルコースがグルコノラクトンと過酸化水素に変化する「酸化還元反応」が起こります。その際、グルコースが酸化される、つまり、グルコースから電子が引き抜かれることになるのですが、その電子を電極へと移動させれば、電流が流れます(下図)。そしてその電流の値を測ると、どれだけの電子が移動してきたか、すなわち、どれだけグルコースがあったかを測ることができるわけです。これがバイオセンサーの原理です。

<「基質」(=計測したい物質のこと)と「酵素」は、鍵と鍵穴のような関係にある。>

このバイオセンサーの原理を発展させて作られるのがバイオ燃料電池です。簡単に言えば、バイオセンサーで流れた電子を受け止める別の酵素をもう一つ組み込んで、電池にしたものです。下図のように、バイオセンサーをマイナス極とし、そしてそこから流れ出る電子を受け止めて「水素+酸素→水」の反応が起きるようなプラス極を、別の酵素を利用して作ります。すると回路に電流を流すことができ、電池になるのです。

<マイナス極では、尿糖や乳酸といった物質が、酵素の働きで「酸化」されて電子と水素イオンが生成する。一方プラス極では、マイナス極でできた水素イオンと電子が、空気中の酸素と反応して「還元」されて水になる。>

バイオ燃料電池は、マイナス極がバイオセンサーとして働くため、体内の物質を測ることができます。と同時に、それに必要な電力を自分で生み出すこともできます。この仕組みを利用すれば、たとえば血液中の糖と酵素を利用したバイオ燃料電池を体内に埋め込むことで、バッテリーなしで血糖値を測り続けられることが可能になります。

このバイオ燃料電池を活かして、私たちはいま、いろいろなウェアラブルデバイスの開発に取り組んでいます。たとえば以前開発したものでは、人の汗で発電する電池があります。和紙に炭素の電極などを印刷し、その上に、汗の物質の反応を促進させる酵素を塗る。すると、これを体に貼っておくだけで、汗によって電子機器が動かせるようになるんです。

排尿の有無や疲労度、熱中症が手軽にわかるウェアラブルデバイスを

――汗で電子機器が動くというのはすごいですね!このようなウェアラブルデバイスというのはこれまでになかったものなのですか。

バイオ燃料電池の概念自体は、50〜60年前からあったのですが、当時は出力が低すぎて何に使えるかわからないという状況でした。それが、2000年代前半頃になると、材料化学などの発展で、出力がだんだん上げれるようになってきます。つまり、より効率的に、酸化還元反応が起こせるようになり、より多くの電子を流すことが可能になった。そうして実際にその電力を何かに利用できる可能性が出てきたのです。

私たちもそのころにこの分野の研究を始め、いろいろなウェアラブルデバイスの可能性を探ってきました。そして2015~20年には「バイオ燃料電池を搭載したウェアラブルヘルスケアデバイスの創成」というテーマで国の戦略テーマ重点課題に採択され、タニタ、筑波大学、理化学研究所、アイシン・コスモス研究所とともに、いろいろな研究を進めてきました。

――汗で発電する電池以外には、どのようなウェアラブルデバイスを作られているのですか。

一つには、尿で発電する「おむつ電池」というものを作っています。おむつの中に、バイオ燃料電池と無線発信器を埋め込んで、排出された尿に含まれる尿糖によってバイオ燃料電池を発電させます。そして、尿が一定量たまったらその電気によって無線発信器から外部の端末に尿が出たことを知らせるのです。尿糖値も同時に測れます。これを、介護現場などで利用してもらえれば、介護負担を軽減できるのではと考えています。

――なるほど、尿が出たことをおむつが自ら伝えることができるというのは、とても有用そうですね。

もう一つ別の例をあげると、先に説明した汗で発電するデバイスを発展させて、汗で乳酸を測定するバイオ燃料電池も作っています。乳酸値は、疲労具合を評価する指標として知られていて、アスリートは、トレーニング中に血中の乳酸値を測ったりします。その際、現状では指先に針を刺して血を取る必要がありますが、それが、センサーを体に貼るだけで測定できるようになれば、とても手軽で有用だろうと考えています。

その他、いま私たちが特に注目しているのが、熱中症のセンシングです。熱中症は、重症になると後遺症が残ることもあるので、そうなる前に体の状態を知ることが重要です。現状でも、衣服や時計型のウェアラブルデバイスで心拍数を測って熱中症の危険性を測る技術はありますが、それだけでは誤差が大きい。心拍数に加えて発汗量や汗の成分の変化、体温上昇、乳酸値などを、イオンセンサーや乳酸センサーで測定すれば、より的確に熱中症を診断できます。そのようなデバイスを作れたらと思っています。

他の分野の研究者と積極的に連携する

――お話を聞くほどに、バイオ燃料電池が持つ可能性の大きさを感じます。さまざまな分野で活用でき、まさに創域的な技術ですね。

自分で言いますが、じつは私は、まさに創域的な人間なんです(笑)。私自身はセンサーを作るのが専門ですが、自分だけでできることは限られています。そのため、たいてい私から他の分野の方に「一緒にやりましょう!」と声をかけるところから研究が始まっています。これまでの研究も、酵素、炭素、スポーツ生理学、機械工学、薬学など、様々な分野の研究者と一緒にやってきました。理工学部内の先生のみならず、他学部、他大学の先生とも連携しています。

――自ら積極的に他の先生に声をかけて連携を進められているとのこと。それは理工学部の「創域」をはじめとして、本学の中に連携しやすい雰囲気があるのか、それとも、四反田先生ご自身のパーソナリティが大きいのでしょうか。

私は学生のころから、いろんな人と積極的にかかわろうとするタイプだったので、個人的な部分は大きいと思います。「創域」という言葉とは関係なく、連携できそうな先生に声をかけて研究を進めてきました。ただ、理工学部として「創域」を掲げ、横断型コースなどを導入して、融合や連携を意識するのはとてもいいことだと思っています。特に学部生や修士の学生だと自分だけでできることは限られているので、連携しようという雰囲気があることで、自然に研究の幅が広がっていくように感じます。

――学生にとっても、やはり他の分野の方と連携することは重要なんですね。

基本的にはそうですね。ただその一方で、必ずしも誰でも闇雲に連携すればいいとも思っていません。一人で黙々と一つのことを深掘りしたい人はそうすればいいし、そうする方がいい場合もあります。逆に私のように、外と連携して何かをやりたいという学生には、そういう門戸が開かれていることが重要です。その両方の選択肢が見えやすくなっている状態が理想的だと思いますが、今後「創域」がさらに前面に打ち出されることで、よりその状態に近づくのでは、と期待しています。

自ら発信することで、連携を生み出し、「創域」する

――他の研究者と連携したいと思っても、積極的にできる人とできない人がいる気がします。積極的にできるコツみたいなものがあったら教えてください。

コツというのは特に考えたことありませんが、あえて言えば、断られたどうしようとか、この人はどんな人だろうかとか、あれこれ考えないことでしょうか。事前にリサーチしすぎずに、とりあえず面白そうだったら会いにいく。そこが私のいいところでもあり悪いところでもあるのですが(笑)。

――最後に、これから研究者を目指す人にメッセージをお願いします。

長く一緒に研究をしている先生とよく言ってるのは、「1+1を100にしよう」ということです。一見、全く関係なく見える分野の人と協力することで、思ってもみなかった新しいものが生まれることがあります。自分の専門性を大事にしながらも、常にそういう可能性を意識しておくことが大切だと考えています。

そうした意味からも、自分が何をやっているかをアピールする、PRするというのは大事だと思っています。YouTuberになれとは言いませんが、自分から発信していくと思いがけない連携が生まれる場合があることは、プレスリリースを出したり、メディアの取材を受けたりする中で、実感してきました。そうして自分の研究を広く知ってもらうことで、「創域」という概念をさらにうまく生かしていけるのではないかと思います。

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