後藤 允准教授 Makoto Goto
社会に潜むリスクをモデル化し、最適な解決策を求める
金融における工学的なアプローチの総称を金融工学といい、金融市場の不確実性に起因するリスクを分析します。企業経営においてもリスクは重要な視点であり、金融工学の技術を応用したリアルオプションによって経営上のリスクを分析し、投資などの意思決定に役立てます。応用分野として、スポーツファイナンスや感染症問題にも取り組みます。本研究室では、これらの研究指導をとおして、工学的な問題発見・解決能力を備えたリーダーを育成します。
スポーツの世界をファイナンスの視点で斬る
本研究室が今後力を入れていく分野としては、スポーツファイナンスになります。スポーツというと、運動、娯楽というイメージが一般的かと思います。売上高という視点で見ると、アメリカ4大スポーツ(NFL, MLB, NBA, NHL)の合計は概算で5兆円を超える一大産業になっています。もはやスポーツはビジネスという側面を無視できず、スポーツビジネスという分野で研究が盛んになっています。
そこからさらに踏み込んで、ファイナンスの視点でリスクを分析して評価しようとするのが、スポーツファイナンスです。一例をあげると、サッカーの世界で2017年に記録された、ネイマール選手の移籍金278億円という金額があります。選手たった1人に本当にその価値があるのか? 新しいチームに移籍しても以前のようなパフォーマンスが維持できるのか? 怪我のリスクは? さまざまなリスクが潜んでいることは明らかです。本研究室ではこれらのリスクに着目し、サッカーには選手のパフォーマンスを測る指標があるので、まずはこれをデータからモデル化します。その上で金融工学の技術を応用してリスクを分析し、選手の価値を評価する研究を進めています。
【産学連携】プロセスマイニングで業務効率を改善する
本研究室では理論研究だけでなく、産学連携にも力を入れています。その一例として、経営システム工学科OGで、ビジネス界で活躍するデロイトトーマツリスクアドバイザリー株式会社の有川慶子パートナーのチームと、プロセスマイニングを用いた講義・研究について連携しています。
プロセスマイニングとは、さまざまな業務プロセスから抽出したデータをもとに業務プロセスを可視化し、内在する課題やリスクを特定して業務改善を支援するツールです。1990年代後半にオランダで誕生した比較的新しいツールで、ビジネスでは2015年頃から欧州を中心に活用されています。膨大な業務プロセスデータを扱うため、DX(デジタルトランスフォーメーション)との相性も良く、データから業務を改善するという、まさに経営工学的なツールといえますが、日本ではまだまだ普及していないのが現状です。
本連携では、プロセスマイニングを題材に実験科目を共同制作し、受講生が購買・調達部門の実データを分析し、業務改善までを学べる機会を作りました。学生がビジネスに触れられる貴重な学びの場になると考えています。プロセスマイニングは適用範囲の広い実践的なツールです。今後も、ウェブページのアクセス解析、食品の産地偽装リスク可視化、スーパーの顧客動線分析など、幅広い共同研究を実施する予定です。
一緒に情熱と知性を追求しよう!
勉強がしたい、研究がしたい、金融専門職に就職したい、コンサルタントになりたい、世の中の役に立ちたい、そんな熱い気持ちをもった学生さんたち、大歓迎です。卒業研究に全力で取り組み、卒業研究をとおして社会で通用する力を身につけてください。