馬場 蔵人准教授 Kurando Baba
幾何学を通して見えてくるカタチの本質
数学の長い歴史を振り返ると、幾何学はその根幹をなす分野であり、新たな視点を数学の世界に提供してきました。この洞察は数学の領域にとどまらず、自然界や情報の世界にも深く影響を及ぼしています。
馬場研究室では、微分幾何学を中心に研究を展開しています。ガウスやリーマンによって切り拓かれた微分幾何学は、図形の曲がり方から図形の形について探求する学問であり、トポロジーのような図形のつながり方とも深く関連しています。現代数学の様々な手法を駆使し、図形のカタチがもつ本質を明らかにしていきます。
対称性の幾何学 ~新たな定理の解明を目指して~
日常生活に溢れる様々な形の幾何学図形、その美しさに心を奪われることがありますが、その理由を理解することで、周囲の世界とのつながりを感じることができます。
馬場研究室では対称空間とよばれる図形(多様体)を中心に研究を行っています。対称空間は球面や双曲面などを一般化した図形として知られており、図形がもつ対称性を利用して分類定理や双対定理などが発見されています。私はこれらの理論を拡張し、対称空間論における新たな分類定理や双対定理などの発見を目指して研究を行っています。また、微分幾何学では何か新しい理論が構築されると対称空間に適用してみるというように、幾何学の中でモデルケースとして利用されます。対称空間の幾何学を応用して数理物理学において深く関わるカラビ・ヤウ多様体やハイパーケーラー多様体などの研究にも取り組んでおり、図形の対称性は重要な役割を果たしています。
馬場研究室のセミナーでは幾何学に限らず数学の研究に触れる機会を提供しています。セミナーでは、現代幾何学の一つの出発点となる曲線・曲面論の基本をはじめに学んでもらい、ガウスの驚異の定理やガウス・ボンネの定理などの理解を目標にしています。その後は研究テーマを学生自ら設定してもらい、卒業論文や修士論文の執筆を通して研究の価値を見出していきます。最近では大学院生との共同研究において、対称性だけでなく調和性の観点からも対称空間上の幾何学について研究しています。
いざ数学の世界へ!
数学は、私たちが日常的に学校で学ぶ計算の方法や図形の性質だけではなく、深い理論や抽象的な概念を含み多岐にわたる分野です。扱う題材も非常に現実的で日常的なものから、抽象的で難解なものまでさまざまですが、数学を通じて私たちは世界をより深く理解し、自分自身の可能性を広げることができます。
数学は今もなお発展を続けており、その最先端に迫ることは挑戦的な取り組みです。数学は一歩一歩着実に理論を築き上げる学問であり、それに伴う難しさを感じることがありますが、それらを乗り越えていく経験や、何かを成し遂げたときに得られる喜びや成長は、皆さんの人生にとって貴重なものとなってくれます。