物理化学・分光学
原子・分子レベルから自然現象の本質に迫りあらゆる分野の発展を基盤から支える
化学はもちろん、物理・生物・地学から産業界まで、幅広い分野の発展の根幹
物理化学、分光学という分野をご存じでしょうか。
物理化学とは、物質を構成する原子や分子が生み出す構造や性質、反応過程を明らかにする学問です。分光学は物質に「光」を当て、その物質からのさまざまな応答(光・熱・音)等を計測し、原子や分子が生み出す構造や性質、反応過程を精密に調べます。
測定対象になる物質はさまざまで、生物や鉱物の場合もあれば、人工的な材料や、それらが組み合わさった半導体や電池などのデバイスなどの場合もあります。つまり、構造や性質、反応の根幹に原子・分子レベルから迫ることで、自然科学の発展はもちろん、工業製品であれば、より高い性能を目指すための指針を与えることで、産業界の発展にも役立つのです。
カギは化学的な多様性と普遍性
「水」が秘める大きな可能性
現在、私の研究室では「物質や材料」と「水」とが出会った時、物質や材料の表面に、どのような構造や性質、反応が生み出されるか、を研究しています。
「水」は分子として大気中に普遍的に存在しているだけでなく、身の回りでは液体として様々な物質を溶かし込んでいます。元々「水」に溶けているミクロな物質の方を研究していましたが、研究を重ねるうちに「水」そのものがもつ化学的な多様性・普遍性において、物質の構造形成、性質の発現、反応の進行など、いたるところで重要な役割を果たしていることに気づきました。
最近では、太陽系形成の初期過程で炭素や水が豊富だったと推定される小惑星から、直接採取された鉱物試料の分析なども手掛けています。既存の設備を利用する場合もありますが、これまで素の様子を測定することが難しかった対象には、光の当て方や試料環境を工夫したり、一から計測装置そのものを開発したりするなどして、計測に挑みます。大変なように思うかもしれませんが、これまで見ることができなかったことを見えるようにしていくことは、新しい発見につながる可能性があるので、とてもやりがいを感じます。
異なる学問分野の架け橋となる化学
知識の原動力は好奇心とチャレンジ精神
化学は原子と分子の組み合わせとその変化を扱う学問ですので、原子や分子から構成される我々の世界を扱う物理や生物、地学、工学、様々な分野に橋が架けられる学問体系だと思っています。ある物質について研究を始めると、周辺の学問分野を含む総合的な知識や学力を要求されることがありますが、好きこそものの上手なれ、あまりデスクワークの成績は気にしていません。むしろ、ある物事を深掘りしていくときに、その周辺のことも含めてどんどん理解していこうとする知的好奇心が大切です。また研究のために必要な道具を新たに創っていくところから始めることもあります。創意工夫が好きで、好奇心・チャレンジ精神旺盛な皆さんの参加を待っています。