惑星圏物理学
生命を育む環境はどう発生し進化するのか知的好奇心で挑む無限の宇宙
惑星圏で誕生する生命環境の謎にあらゆる研究手法を総動員
ひとつの「惑星圏」の中で、生命環境はどのように発生し進化してきたのか?
この問題を明らかにしようとする研究が、私たちの取り組む惑星圏物理学です。
私の研究では、惑星と衛星が相互にエネルギーや物質をやり取りしながら、ひとつの「惑星圏」というべき系を作っているとみなします。その中で生命環境がどのように発生し進化してきたかを明らかにするための研究を行います。
対象となるのは、巨大惑星の宇宙環境、氷でできた天体の表層や内部の水の海「内部海」、月や水星のクレーター内にある氷、地球や火星の大気や海洋、系外惑星の大気や宇宙環境と多岐にわたります。
研究手法は、室内実験、直接探査、遠隔観測、データ科学、理論など、あらゆる手法。表層・大気・海洋がどの様に発生し、維持されるのか?その中でアミノ酸やタンパク質などの生命前駆物質が合成されうるのか?されたとしたら、その後生命が発生できるのか?こんなことを解明しようと日夜研究を続けています。
暮らし方はもちろん人類の発想まで、アップデートの可能性を秘める基礎研究
この研究は基礎研究で、明日の社会や経済活動に対してすぐに役立つものではありません。しかし、もっと大きな文脈において人類の役にたっていると言えます。例えば、地球外に生命が当たり前だという結果が得られれば、人類の生命観や宇宙観がアップデートされますよね。
また、世界で前例のない研究のために生まれた新規技術が、予期せぬ形で社会の役に立つこともあります。みなさんもよくご存じのコンピュータやプロジェクトマネジメントなどは、アポロ計画で月有人探査を行う際に必要とされた技術。現在の私たちにとってはなくてはならない基礎技術となっています。この研究はそういうニュアンスに近い側面があります。
答えを見つけるのは自分自身
カギは創造性と知的好奇心
分野的には地球物理学、惑星科学、放射線化学など複数の分野の境界あたりに位置するテーマが多く、未解明問題がかなりあります。自由に研究できる反面、先行研究も少ないので、創造性や実行力が試されるという点もあります。
私はテストでいい得点を取れたからといって、いい研究ができるわけではないと考えています。日々の研究は、多くのスタッフと共同で研究をするので協調性が求められます。何よりも答えがわからない事象に挑むには、強い知的好奇心が不可欠です。自分で考えて自分で試行錯誤することが楽しめるような人には向いている分野だと思います。