東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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新しい発想と“創域”的な方法で、材料開発の可能性を広げる―電気電子情報工学科 髙木優香講師に聞く―

圧電セラミックスは力と電気を変換する材料ですが、多くは鉛を含むため環境負荷が課題です。髙木優香講師は、鉛フリー材料の研究で常識を覆す手法を見出し、新たな解析手法とともに材料開発の可能性を広げています。

力を電気に変え、電気を力に変える圧電セラミックスは、振動センサや超音波発生装置など、様々なデバイスに使われています。しかしその多くには鉛が含まれています。そのため以前から、鉛を使わない環境調和型の圧電セラミックスが求められてきました。髙木優香講師は、長くその研究に取り組んできた中、近年、常識を覆す方法で突破口を切り開きました。その一方、材料開発における新たな解析手法を提案する研究も進め、まさに“創域”と言える方法で、材料開発の可能性を広げようとしています。常識を覆す圧電セラミックスの作り方とはどのようなものか。新しい解析手法は材料開発をどう変え得るのか。教育への熱い思いとともに、髙木講師が語ります。

髙木 優香(たかぎ ゆか)2010年 東海大学理学部物理学科卒業、2018年東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科(当時)助教を経て、2023年に現職へ。

常識を破る方法で、圧電セラミックス材料の可能性を引き出す

――髙木先生の研究の概要を教えてください。

私は、エネルギー貯蔵や通信など様々なデバイスとして使える材料の研究開発を行っています。今は主に2つの研究を進めていて、一つは、鉛を使わない圧電セラミックス材料を作る研究で、もう一つは、ポリマーとセラミックスの複合体を作る研究です。いずれもなかなかイメージがしづらいように思うので、それぞれできるだけわかりやすく説明してみたいと思います。

一つ目の、「鉛を使わない圧電セラミックス材料を作る研究」について。まず「圧電セラミックス」とは何かと言えば、これは、力を加えると電気が発生し、逆に電気をかけると動きが生じるようなセラミックス(=非金属の材料の一種)のことです。内部に電気的な偏り(=分極)があり、それが力や電場によって変化する構造を持つためにそのような性質が生じます。

この圧電セラミックスは、振動を検知するセンサや超音波を発生する装置など、様々なところに使われていますが、現在その多くは、鉛が主要な原料となっています。鉛は人体や環境によくないのですが、現状では鉛を含むPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)という物質よりも高性能で用途が広い圧電セラミックスはないため、それがよく使われています。そのためPZTに置き換わる圧電セラミックスを作る研究が広く行われていて、私もその研究に取り組んできました。鉛を含まない圧電セラミックスの課題の一つは、高温になると圧電性(=力を電気に変えたり、電気を力に変えたりする性質)が消えてしまうことなのですが、私は数年前に、ビスマスという元素を含むビスマス系圧電セラミックス(ビスマスナトリウムチタン(BNT))について、高温でも圧電性が消えないようにする作り方を発見しました。

――「作り方」を変えることで圧電性が消えないようになったのですね。どういう方法なのですか。

圧電セラミックスを作るには、まず材料となる物質を混ぜ、それを成形して焼いて冷やすのですが、冷やす際に「ゆっくり冷やす」ということが重要だとされてきました。ゆっくり冷やすと結晶構造が整って、均一できれいなセラミックスができるからです。そのため私ももちろんそのようにやってきたのですが、ある時、ゆっくり冷やすほど実は特性が落ちていることに気がつきました。つまり、ゆっくり冷やすほど、低い温度で圧電性が消えてしまっていました。そこで、逆に一気に冷やしたらどうなるかと試してみたら、なんといい結果が得られたのです。BNTの圧電性が消失する温度は、従来の作り方では150~200℃程度だったのですが、急冷したらそれが約50℃高くなりました。さらに、チタン酸バリウムと混ぜると300℃以上になることもあり、PZTに近いレベルまで高められることがわかったのです。

――一般的にはよくないとされる、いわば常識とは逆の方法を試したら、好ましい結果が得られたのですね。

そうなんです。なぜそうなるのかも考え、メカニズムの解明も試みました。そしてその内容を発表すると、日本セラミックス協会において「進歩賞」という賞をいただくこともできました。現在は引き続き、結晶構造のミクロな部分にまでさかのぼって何が起きているのかを調べたりしています。一方、ゆっくり冷やすとだめなのかと言えばそうではなく、じつはゆっくり冷やすと、圧電セラミックスとしての特性はよくなくとも、エナジーストレージ(=エネルギー貯蔵)材料、つまり電池材料に向く特性が得られるということもわかってきました。このように、BNTというセラミックスは、冷却速度を変えるだけで圧電体からエナジーストレージ材料までコントロールすることができることが見えてきました。そのメカニズム解明を進め、いずれは他の材料でも、作り方を変えることで可能性を広げることができないかを探っていけたらと思っています。

――常識を覆した成果で、インパクトは大きそうですね。今後の展開が楽しみです!

複合体を作る研究のもう一つのねらい

――2つ目の、ポリマーとセラミックスの複合体を作るという研究についても教えてください。

先の圧電セラミックスの研究は、助教だったころから現在まで8、9年に渡って続けているものなのですが、ポリマーとセラミックスの複合体の方は、3年ほど前に始めた新しい研究です。簡単に言えば、ポリマー、つまり分子量の大きい高分子を、セラミックスと混ぜることで、新しい電池や電極材料のような、これまでにない材料を作るという研究です。またこの研究では、新しい材料を作ること自体に加えて、材料開発に有用な新しい解析手法を提案することも目的としています。

――材料開発における新しい解析手法というのは?

私たちは複合体を作る時、どろどろのポリマーの中にセラミックスの粉を混ぜて練っているのですが、その時の状態を画像解析を用いて分析し、そこから何か有用な情報を得ることができないかを探っています。つまり、セラミックスの粒がどのように分散、凝集してるか、また、分布がどうなっているかといったことを数値化し、その数値によって、できあがる複合体の特性を予測するようなことができないかと考えています。具体的には、マルチフラクタル解析という数学の手法を使った解析にいまはトライしています。

マルチフラクタル解析とは、フラクタル性(=全体と一部が相似になっていること)に着目した解析の手法で、銀河系の構造や株価の予想などの研究にも使われています。また、マルチフラクタル解析は、材料分野において重要な熱統計力学とも関係が深いため、材料開発とも相性がいいと思われます。

この方法によって、材料の性質を予測できるような指標を導きだすことができたら、材料開発においてとても有用だろうと考えています。そして、このような数学的手法を用いた解析に関する知見を積み重ねることで、いずれ「計量形態学」という分野を作れないかとも検討しています。

ポリマーとセラミックスの複合体を電子顕微鏡で観察して着色した画像(黒がポリマー、赤がセラミックス)。倍率を変えて拡大した時に相似な形が見えるのがフラクタル性。そのような粒子の並び方や粒子の分布の様子と電気的特性との関係を髙木講師は探っている。人工的な構造や配列によって自然界にはない機能や特性を示す物質を「メタマテリアル」と呼ぶが、髙木講師は、材料を混ぜた時に自己組織化することで特性を示す物質もメタマテリアルと捉え、研究を行っている。

――解析手法に着目されたのはなぜですか。

きっかけは、自分自身で研究室を持つようになって何か新しい研究を始めようと思ったことです。装置もお金もない中で、比較的やりやすい研究はなんだろうと考えて思いついたのが解析手法の研究でした。セラミックスの粉とポリマー、あとはパソコンさえあればできるので。そしてもう一つ考えたのは、この研究は、学生にとってもきっといい学びになるはずだということです。

私の研究室の学生を含め、大半の学生は卒業後、企業などに就職します。とすれば、大学時代にただ一つの実験だけに特化するより、画像解析やプログラミングも学んでもらえるようにする方がその後につながるのではないかなという発想です。実際に自分で手を動かして作った複合体をコンピュータで解析するという研究は、その意味で、教育的にも意味があるのではないかと考えました。

分野の枠にとらわれずに自分自身で試行錯誤してみてほしい

――学生の学びも考慮されて研究テーマを考えられているのですね。

私は、自分が学部生の時も大学院生の時も、先生に熱心に教育していただきました。そして今その方針にとても共感しています。そのため自分も、学生が社会に出る前にどんな力を身に付けるべきか、そのために自分は教員として何ができるかといったことをよく考えます。まずは自分で必死に考えてやってみると力がつくと思うので、学生たちにはできるだけ自分で考えるようにしてもらっています。

そんなこともあって、こちらの研究では、学生自身が自力で自由な発想でやってもらうようにも心掛けていて、その結果、最近では複数の学生がこの研究で論文を書いて学会で受賞に至ったりしています。東京理科大学の学生はやはり皆さん優秀で、こちらがちょっとしたパスを投げると、どんどん自分で考えてしっかりと成果まで出してくれるので、とてもやりがいを感じています。

――お話を伺っていて、髙木先生の指導方針は“創域”とも親和性が高そうに感じました。“創域”というコンセプトについてはどうお考えか教えてください。

“創域”とは、新しい領域を創っていくということだと考えていて、そのことはよく意識しています。複合体の研究を例にすると、情報の専門家が画像解析をやって、物理の専門家が熱統計をやって、数学の専門家が確率論をやる、というのではなく、画像解析もフラクタルも熱力学も、全部自分で試行錯誤しながらやってみる。すると例えば「あ、こうすれば材料分野の研究を発展させて『情報熱力学』を議論できるのではないか」といった発想も出てくるように思います。 “創域”的な考え方とはそのようなものだと私は捉えていて、これからの時代にはますます重要になってくる気がします。

また私は、横断型コースの「エネルギー・環境コース」に所属していて、普段、様々な学科の学生が一緒にディスカッションする様子を見ています。するとすごく面白いアイディアが出てくるんです。そういう場面を見ていると、やはり自分のところだけで殻に閉じこもっているのでなく、どんどん知らない世界に出ていって、新しい刺激を受けて、面白いものを作っていこうとすることがとても大切なんだなと感じます。創域理工学部は、そういうことがしやすい環境にあるので、学生たちにとってとてもよい学びの場になっているように感じます。自分自身も、そういう学生たちと一緒に、新しいアイディアを出し合いながら試行錯誤を続けていきたいと思っています。

研究は、誰もに開かれたフェアな世界

――髙木先生にとって研究の面白さはどのようなところにありますか。

研究というのは、自分の自由な発想で思うようにできる仕事だと感じます。それが私にとってはとても大きな魅力です。こんな実験をやってみたいと思ったら、学生と一緒に装置を組み上げてやってみればいいし、画像解析をやろうと思ったら、それが自分の専門分野ではなかったとしてもとにかくトライしてみればいい。会社などで働く場合は、そのように仕事をすることはなかなかできないように思います。というのも、私は修士号を取ったあと、一度企業に就職してネットワーク系の技術者として3年半ほど働いていました。その経験があるために、好きなように仕事ができる今の環境に対して特に魅力を感じるのだと思います。

あとは、研究はフェアな世界というか、自分のような小さな存在でも、地道に研究を積み重ねて論文を英語で書けば、世界の人に研究成果を知ってもらえるというのが、すごくいいなあと感じます。学会で発表すると、海外の偉い先生でも自分の研究に興味を持ち、話を聞いてくれるので、そんな時、自分もこの世界の中で、一人の研究者として生きているんだということを実感できてうれしくなったりしています。

――最後に、研究者を目指す若い世代や高校生へメッセージをお願いします。

自分は何が好きで何が嫌いか、何に興味があって何にはないか、といったことを知るのは大事だなあとよく感じます。そのためにもぜひ若いうちに、怖がらずにいろんなことにトライして、経験して、何か一つでも「やってみたい」と思えるものを見つけてもらえたらなと思います。また、オープンキャンパス委員をやっていていつも思うのですが、皆さん一人ひとり、それぞれに素敵な個性を持っているはずです。なので、自分を信じて、自分を過小評価しないで、進みたいと思った道に思い切って進んでいってほしいです。そしてその目指す先に東京理科大があるのであれば、ぜひ頑張って入学してもらって、一緒に勉強や研究ができたらと思います。待っています!

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