
先駆けて取り組んできた「創域」の取り組みを、さらに深化させることを目指して
創域理工学部・創域理工学研究科がスタートしてから3年半となるこの10月、執行部が新体制になりました。分野横断型の取り組みが社会で広がるなか、先駆けて「創域」を掲げてきた学部・研究科は今、何を目指すのか。新執行部の3人が語ります。
創域理工学部・創域理工学研究科がスタートしてから3年半となるこの10月、執行部が新体制になりました。分野横断型の取り組みが社会で広がるなか、先駆けて「創域」を掲げてきた学部・研究科は今、何を目指すのか。新執行部の3人が語ります。

創域理工学部・創域理工研究科がスタートしてから3年半となるこの10月、執行部のメンバーが変わりました。学部長は引き続き、電気電子情報工学科の堂脇清志教授が務めますが、副学部長には先端物理学科の幸村孝由教授が、そして創域理工学研究科の研究科長には電気電子情報工学科の星伸一教授が、それぞれ新たに就任しました。近年、分野横断型の教育や研究が社会で広く求められるようになり、様々な領域でそういった取り組みが始まっています。その中で、先駆けて「創域」を掲げてきた創域理工学部、創域理工学研究科は、今、何を目指すのか。新執行部を担う3人が語ります。
堂脇 清志(どうわき きよし)- 創域理工学部 学部長 早稲田大学理工学部資源工学科卒業、東京大学工学系研究科地球システム工学専攻 博士課程修了。博士(工学)。地球環境産業技術研究機構 主任研究員、産業技術総合研究所 客員研究員などを経て、2012年より本学理工学部経営工学科 教授、2026年より創域理工学部電気電子情報工学科 教授。創域理工学部 学部長は2024年10月から務め、今回で2期目。
幸村 孝由(こうむら たかよし)- 創域理工学部 副学部長 大阪大学理学部 宇宙・地球科学科卒業、大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻 博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会 特別研究員(PD)、工学院大学工学部共通課程 准教授、本学理工学部物理学科 准教授などを経て、2019年より教授。
星 伸一(ほし のぶかず)- 創域理工学研究科 研究科長 横浜国立大学工学部電子情報工学科卒業、同大大学院工学研究科電子情報工学専攻 博士課程修了。博士(工学)。茨城大学工学部 助手、講師、本学理工学部 准教授を経て、2014年より教授。


幸村:一番の若手となる自分からお話させていただきますと、副学部長としての私のこの2年間のミッションは、本学の5年後や10年後という未来に向けて、いかにして多様な種を仕込んでいけるかだと考えています。その一つのマイルストーンとなるのが、2031年に迎える本学の創立150周年です。その時に本学がどのような大学になっていたらよいかということを念頭に置いて、今、プラン作りを進めています。今年度から創域理工学部と創域情報学部という2学部体制が始まりましたが、創域理工学部がこの3年半で培ってきた融合の教育・研究の形を、創域情報学部も含めた新しい体制の中で発展、拡張させていくべく、積極的に動いていきたいと思っています。特に今、私自身がやっていきたいと考えているのは、野田キャンパスをこれまで以上に盛り上げて、学生も教職員も、みながいつまでもいたいと思える楽しい場所にしていくことです。地域の方や企業の方をはじめ、いろいろな立場の方が集まって融合して、いつも何か新たなことが起きているような環境にすべく、様々な提案をしていきたいです。

星:私は今回、創域理工学研究科の研究科長を拝命しましたが、先月までは、創域理工学研究科に設置された「サステイナブルアーバンシティセンター(CSUC=シーサック)」(※1)のセンター長を務めていました。融合型教育・研究と実践するためのセンターで、その中で私は、企業の方や地域の方と様々な交流やディスカッションを重ねてきました。創域理工学研究科には次年度から情報理工学専攻が立ち上がり、「共響(きょうめい)デジタルスタジアム」という新しい科目がスタートします。情報系、数理系そして工学系の学生がチームを組んで、プロジェクトベースラーニングを実施していくという取り組みで、その中に企業の方や高校の先生などにも入っていただこうと考えているのですが、例えばそうした際に、私のCSUCでの経験を活かせたらと思っています。
先ほどの幸村先生のお話にもつながりますが、研究科も、様々な形で人と人とが交わることで価値が生まれる場にしていきたいと考えています。また、理系人材を増やすことにも貢献すべく、地域の小学校などと連携して科学に興味を持ってもらえるような活動を展開したり、その一方で、博士課程には社会人の方たちを積極的に受け入れたり、といったこともこれまで以上に進めたいです。さらに、博士号を取った人たちがもっと活躍できるように企業との連携も強め、社会への道筋をより堅牢なものにしていくことも、この2年間の目標です。CSUC、そして2025年度に始まった全学的な分野横断的取り組みである「TUS SciTech(TUS サイテック)構想」(※2)とも一緒に、そうしたことを進めていきます。
堂脇:かつての理工学部が創域理工学部となってから3年が過ぎて、最近ようやく、「創域」という考え方、すなわち、学科を越えて横串を通すような横断型の教育・研究のあり方が定着してきたように感じています。一方、この同じ時期に、他大学や企業、また国においても共創によるイノベーションといったことの重要さが謳われ、いろいろな取り組みが進められてきています。
そうした中で創域理工学部は、その先頭を走ってきたという自負があります。それだけに大きな蓄積もあると考えていますが、これからの2年間では、さらに私たちの強みを出していけるよう、私は学部長として、その基盤となるプラットフォーム作りに尽力したいと思っています。
(※1)サステイナブルアーバンシティセンター(CSUC)
創域理工学研究科の大学院横断型コースを始めとする融合型教育・研究を基盤とし、実践的な地域貢献や社会貢献を実現するための体制として、2023年4月に創域理工学研究科に設置。https://dept.tus.ac.jp/csuc/
(※2)TUS SciTech(TUS サイテック)構想
東京理科大学ならではの独創的かつ分野横断的な教育研究(TUS SciTech)を重点的に強化することにより、本学が世界と伍する研究大学として、国内外から優れた研究者が集う研究拠点へと発展することを目指す構想。本構想を推進するための組織として、2025年度に「TUS SciTech 共創推進本部」を設置。https://www.tus.ac.jp/research/scitech/

堂脇:なぜ東京理科大学なのか、他大学とどう違うのか、ということを考える時、私はいつも、本学が掲げる「実力主義」という語に立ち返ります。本学は長年にわたって就職率全国1位(※3)を維持していて、かつ教育力、研究力についてもナンバーワンという評価(※4)をいただき続けています。そのように結果を出し続けてきた本学だからこその社会や企業との連携が確実にあり、それがCSUCやTUS SciTechという独自の融合型・分野横断型の取り組みとして結実しているのだと考えています。
また、こうした連携を海外の大学とも進めていこうと考えていて、創域理工学部では現在、インドの理工系大学との交流が始まっています。インドの優秀な学生に本学に来てもらい、ともに横断的な研究をし、その中で育った人材を企業へとつなげていく。そのような仕組み作りを私たちは他の大学に先駆けて行っており、そのような点からも、本学の横断型教育の独自性は今も決して小さくないと考えています。

星:そうですね、今、分野横断の動きが全国的に広がる中、やはりその流れを先導するように走ってきたことは本学の強みだと思っています。さらに言えば、本学の分野横断の取り組みは、2023年に始まったものではなく、2017年に横断型コースを始めた時にまで遡ります。私自身の研究についても、私は元々電気工学が専門ですが、横断型コースに参加して、化学、機械、材料といった分野の先生方とつながれたことで、大きく発展してこられたという実感があります。そうした融合や発展は、決して一朝一夕でできるものではありません。その意味で、本学の分野横断的な取り組み、すなわち「創域」は、その浸透度において抜きん出たものがあるのではないかと自負しています。
幸村:私も同じく、先駆けてやってきたことの強みを感じています。その一例として昨年、こんなことがありました。創域理工学部1年の物理系の学生さんから、相談を受けたのですが、その学生さんは、文化祭関係のサークル活動をやっていて、その活動で、学科も専門も異なる学生が集まっているのにそれぞれの専門性を活かした取り組みができていないのがもったいない、何か融合する方法はないでしょうか、というんです。なぜそんなことを思ったのかと言えば、本学部の一年生全員が受講する「創域特別講義」の影響があったようでした。この授業では、毎回、専門の異なる教員2人が、互いに共通するテーマを見つけて講義をし、一方の学生側も、学科の異なる8人ほどがグループを作って講義を聴き、議論して一緒にレポートを作り上げていきます。その取り組みを通じて、創域的に物事を考えることが自然になっていったようでした。私が直接聞いたのはこの一例だけですが、このような考え方が染みついている学生さんはきっと少なくないのではないかと思います。それはまさに、分野横断ということを意識して様々な試みを行ってきたこの10年近い取り組みの結果なのではないでしょうか。このような意識の広がりの中に、私は、時間をかけてきたことの意味を感じています。
(※3)「就職率全国1位」
「大学通信」が実施した2026年の就職状況調査において、東京理科大学の実就職率は94.4%。同調査開始以来、卒業生数4000人以上の大学で19年連続全国1位。
(※4)「教育力、研究力についてもナンバーワンという評価」
大学通信が2025年度に実施した、全国の高等学校の進路指導教諭“オススメの大学”に関するアンケート調査において、東京理科大学は私立大学で最も「教育力が高い大学」「研究力が高い大学」に選定。「教育力が高い大学」では2020年から6年連続、「研究力が高い大学」では2016年から10年連続の私大1位獲得。

堂脇:創域理工学部に対する高校生の意識は、確かに少し変わってきたように感じます。その背景の一つには2022年度から高校の授業に組み込まれた「探究学習」の影響があるのではないかと思っています。探究学習は、高校生が興味のあるテーマについて自分で探究・研究し、理解を深めていくというものですが、それはまさに分野をまたいだ創域的な取り組みになることが多いんです。とはいえもちろん、高校の授業でできることは限られています。そこで、そういった探究学習の延長線上で本格的な研究ができる場として、創域理工学部を意識してくれる高校生が増えているように感じています。まさにその点でも、創域理工学部は、現在の流れにとてもよく合致した存在になっているのではないかと思います。
幸村:そうですね、本学部は探究学習との親和性も高いですね。加えて、探究学習を経験した高校生が、分野を越えて探究するという意識を1年生の時から高められるという点でも、創域特別講義があることの意味は大きいと私は感じています。一方でこの講義は、担当してくださる先生方にとっても、専門が異なる他の教員と互いの共通項を見出して授業を組み立てなければいけないという点でチャレンジングです。そのため、おそらく大変だろうとは思うのですが、それでも皆さん、しっかりと授業を組み立ててくださっていて、その点もまた、2017年に横断型コースが始まった時からの本学部の蓄積の結果だと思います。

星:AIの取り扱いについては、学部や研究科単位というより、全学で現在方針を作っているので、大きな方針としてはそれに従うことになりますが、私見を言えば、AIを使うのはいいけれど、リアルな経験を持てる機会を大切にし、その中でいかに自分自身で考えて判断する能力を身に付けていくか、ということを意識しなければならないと思っています。分野横断で何かをやっていく上では、人と人がつながって、アイディアを出し合い、一緒に試行錯誤していくことがとても重要です。そうした創域的な取り組みを通じて、リアルな経験を積み重ねて、考える力を獲得していってもらいたいです。
堂脇:高校生は探究学習の中でもすでにAIをかなり活用しているということを聞いています。大学でも、活用することは前提としながらも、そこに人間がどう関わっていくかについて、さらに議論を進めていく必要があると私は考えています。
幸村:個人的にAIは積極的に導入していくべきだと考えていますが、しかし、AIに使われる人材になってはいけません。そのためにも、自力で考えるということを捨ててはいけない。大学では、教員がアナログな方法で、例えば学生が書いてきたものに対して口頭でその意味について尋ねるといったことを常に行うことで、学生に自分で考えることを続けてもらわないといけないと思っています。その点、教員の皆さんには負担をかけることになりますが、教員側もまた、AIを使うことで一部の業務に割くリソースを減らし、その分を学生へのアナログな教育に割いてもらえるよう、学部としても方法を考えていきたいです。

堂脇:先ほど、プラットフォームを作っていきたいということを言いましたが、その形として具体的にこの2年間でやりたいのは次の3つになります。まず一つは、先ほどお話した、海外の大学との連携で、これはまさに今、インドとの取り組みから動き出しています。もう一つは、子どもの数が減っていく中でも引き続き優秀な方たちに入学してもらえるよう、高大連携を進めることです。安定して優秀な生徒さんに来てもらえるように、今、いろいろな高校さんとやり取りを始めています。そして3つ目は、発信、すなわち広報です。この野田キャンパスでどんな人がどのような研究をやっているのかをもっと広く知ってもらいたい。東京理科大学らしい先端の技術なども活用して、私たちがやっていることをさらに広く発信していけるよう、できることをやっていきたいと思っています。
星:最初に申し上げたこととも重なりますが、人口減でどうしても大学院で研究しようという人の数が減っていく中で、それでも研究科が研究力を維持するために、留学生や社会人など、幅広い立場の方を受け入れていけるような仕組み作りをまず進めていきたいです。そのためにも、博士号を取ったあとにそれを活かせるキャリアパスを提示していくことが大事だと思っています。CSUCのセンター長としての経験を積極的に生かして、企業との連携強化を進め、研究科の修了者が社会へと羽ばたく道筋をさらに広げていけるように、これから2年間取り組みを進めていきたいです。

幸村:私は、一言で言うと、まずはより開かれた大学を作るというところに尽力したいと思っています。これまでも開かれた風通しのいい大学、学部だったとは思いますが、冒頭にお話した通り、地域の人、企業の人、海外の人、そして、様々な立場で教育に関わる人たちに、もっともっとキャンパスに入ってきてもらいたい。我々3人でできることには限界がありますし、野田の職員みなでできることにも限界がある。外からの風を取り入れないとどうしても大学は変わっていけないので、そういう面においてできることを、副学部長として存分にやっていきたいと思っています。
堂脇:一言、自分のことを付け加えさせていただくと、私はあと2年で還暦を迎えます。自分としては、その時には若い世代の人にバトンタッチするべきだと思っているので、私にとって執行部としての仕事はこの2年が最後です。2年後にやり残したと思うことがないように、そしてスムーズにバトンタッチして退けるように、この2年を全力で走り抜けます。星先生、幸村先生、どうぞよろしくお願いします。
幸村:この中では私が一番若手ですが、自分の感覚としては、60歳はまだ青二才です(笑)。今後、私の世代、そしてさらに若い世代がバトンを受け取ることになるとしても、堂脇先生にも星先生にも、まだまだたくさん力をお借りしたいと思っています。若手もベテランもともに力を合わせていける環境づくりをしていけたらというのが私自身の気持ちです。
堂脇:いやいや、幸村先生には、「心配しないで後は任せてくれ」と言っていただきたかったのですが(笑)。その辺りもこれからもっと話をしていきたいですね。
星:私も堂脇先生と同じ年なので、どうするか考えないといけないですが、それぞれに得意分野、不得意分野があるので、お互いに力を合わせていけたらいいなと思っています。
幸村:いずれにしても、まずはこれからの2年間、力を合わせてやっていきましょう!
