東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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分野を越えた教員同士の創域的連携が、研究を後押しする -建築学科・大宮喜文教授と経営工学科・堂脇清志教授に聞くー

大宮教授と堂脇教授に、それぞれのご研究の詳しい中身とともに、「創域」というコンセプトがどのように研究の中に生きているのかをお話しいただきました。

初回では、「創域」とは何かについて、学部長の伊藤浩行教授(数学科)、大宮喜文教授(建築学科)、堂脇清志教授(経営工学科)の三先生に総論的に語っていただきました。第2回となる今回も、前回に引き続いて大宮教授と堂脇教授が登場。それぞれのご研究の詳しい中身とともに、「創域」というコンセプトがどのように研究の中に生きているのかを、お話しいただきました。

大宮喜文(上写真:左) 東京理科大学理工学部建築学科卒業、同大理工学研究科建築学専攻博士課程修了。国土交通省(現国立研究開発法人)建築研究所主任研究員、キングストン大学ロンドン火災爆発研究センター客員教授、アルスター大学火災安全工学技術研究所客員教授などを経て、2011年より本学理工学部建築学科教授。専門は建築火災安全工学など

堂脇清志(上写真:右) 早稲田大学理工学部資源工学科卒業、東京大学工学系研究科地球システム工学専攻博士課程修了。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構職員、米国ハワイ大学客員研究員、地球環境産業技術研究機構主任研究員などを経て、2012年より本学理工学部経営工学科教授。専門は、化学工学、エネルギー学など。

防災と再生可能エネルギー

――今回は両先生に、それぞれのご研究内容について伺うとともに、そこに「創域」というコンセプトがどのようにかかわってくるのかをお聞きしたく思っています。まずは、それぞれのご研究の概要を教えてください。

大宮:私は、主に建築物の火災安全性に関わる研究をしています。特に「建築防災計画」という、火災時に人が安全で逃げやすいような設計や、建物の耐火性を向上させる方法について考えてきました。中でも最近は、建物のどういう条件だと延焼が拡大しやすいかを理解することを目指す研究をしています。外壁に燃えやすい物が貼られていると一気に上の方まで燃え広がるとか、空間と空間を仕切る壁や扉が火に弱かったら隣の空間にすぐ火が移るといったことです。スプリンクラーのような散水設備を利用した延焼拡大防止システムの開発にもかかわっています。また現在、地球環境やSDGsとの関連もあって、建材として木材をより広く使おうという気運が強まっていますが、そうした中で、木材の難燃化技術、すなわち木材を燃えにくくする技術の開発も重要になっており、その研究も行っています。

堂脇:私は、バイオマスをガス化して水素を作り、その水素を燃料として利用する方法について長年研究してきました。20年前、まだそんなことをやろうとしている人がいなかった時代に、「地域の下水汚泥やゴミから水素を作ることができたらすごいね」といった話をするところから始まって、実際いま、下水汚泥を熱分解して水素を作り、水素吸蔵合金に貯めて利用するというところまで、可能になりました。いまは、それを社会の中で利用するためのシステムの構築を行っているところです。ちなみに、バイオマスをガス化して水素を作ることには成功したのは世界でも私たちだけなんです。

薬剤、品質管理の専門家とともに、木材の難燃化を

――両先生とも、地球環境への意識が強く感じられる研究をされているのですね。ともに分野横断的な視点が重要になりそうですが、まずは大宮先生から、ご自身の研究において「創域」的と感じられている点について教えてください。

大宮:木材の難燃化技術の研究を例にお話ししますね。日本は昔から、木造建築が多いゆえに大火が頻発してきたため、戦後、木材で建物を作ることに規制がかけられてきました。しかし、近年、環境問題への意識の高まりとともに建材として木材が見直され、平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されたことで、木造の公共建築物が建てられるようになりました。昨年のオリンピック・パラリンピックで木材を多く使用した建物が会場として使われました。さらに令和3年にも規制が変わり、公共建築以外の建物にも木材を使おうという動きが活発になっています。そうした中で木材の難燃化技術の開発に注目が集まっているんです。

――木材の建築が増えるとやはり火災の懸念は増しますものね。

大宮:そうなんです。火災に対する懸念はやはり強く、その対策は欠かせません。ただ、この難燃化技術の実現には、私の専門外の知識も不可欠で、他の先生方にご協力をお願いする必要がありました。まずは、木材を難燃化するには適切な薬剤を作り、それを木材に浸透することが必要なので、化学がわからないといけません。さらに薬剤処理ができても、「溶脱」といって、周囲の環境によって薬剤が漏れ出してくることがあります。それが薬剤の効果を弱めたり、表面を白色化させたりするのですが、木材は自然素材ゆえにその影響が材料ごとに異なり、結果、製品のバラツキにもつながる。そのため、その対策には品質管理の知識が必要です。

――なるほど、薬剤を作ること、そして品質管理の点で、それぞれ専門的知見が必要になると。

大宮:そうです。それらの分野の専門家の力がどうしても必要であることがわかったのですが、その両方の点について、理工学部の中に専門の先生がいらしてご協力いただけることになったんです。薬剤については先端化学科の先生に、品質管理については経営工学科の先生に協力していただけることになりました。

――まさに分野を越えた先生方の協力が実現した形ですね。このように先生同士の連携が進む背景には、やはり「共響」や「創域」という意識の広がりがあると感じられますか。

大宮:とても大きいと思います。両先生ともに、2017年に理工学研究科に横断型コースを開設したことがきっかけとなって研究をスタートすることができました。「共響」や「創域」という言葉によって、理工学部全体に、分野横断的にやっていこうという空気ができていたからこそ、私もお声掛けしやすかったし、また、それに対してポジティブなお返事をいただけたように感じています。そしていまでは、むしろそちらの先生方の方がこの研究の中心におられるといえるかもしれません。いずれにしても、以前はこうした連携というのはほとんどなかったんです。いままさに、「これが創域なんだ」と自信を持って言える環境が、整いつつあるように感じています。

産業廃棄物となりえた不純物からカイワレ大根が

――堂脇先生のご研究でも、「創域」的側面はありますでしょうか。

堂脇:先ほどお話したように、私たちは、下水汚泥を熱分解して水素を作る技術を開発したのですが、いまはその水素を、自転車のシェアリングのための燃料として利用するシステムの構築を目指しています。このシステムも、やはり複数の分野にまたがってくるので、私たちも、大宮先生のケースのように、複数の先生とともに研究を進めています。私はいま、そのシステム全体をデザインするという立場にいる感じですね。

――いろんな分野の方がそれぞれの専門性を発揮して、システムの部分部分を作る。そしてその全体を堂脇先生が統括し、システムができていっているのですね。

堂脇:はい。具体的には、下水汚泥の熱分解、不純物を除去してのガス精製、水素の濃縮、そして水素の吸蔵という工程があり、さらに、自転車のシェアリングの運用面も考えなければなりません。この中でたとえば、自転車の運用面に関わってくる、燃料電池をどう制御させるかというところだけでも、機械工学科と電気電子情報工学科の先生、そして学生に検討、評価してもらっています。また、不純物の除去のところでは意外な展開がありました。除去しなければならないのは主に硫化水素で、園芸用の土がそれを吸ってくれることがわかったのですが、硫化水素は、農業では辛味成分として大根などの肥料になるんです。そのため、応用生物化学科の先生と組んで、硫化水素を吸わせた園芸用の土を使って、カイワレ大根や小松菜を作るということも進めているんです。

――複数の研究者が知恵を出し合うことで、思わぬことが可能になっていくのですね。全体で何人くらいの先生がかかわっているのですか。

堂脇:いまで5人ですかね。その他に、複数の学科の学生たちが数多く携わってくれてます。もともと理工学部は教員同士が仲良くて、その土台がある中で5年前に横断型コースが始まって、そこからぐっと具体的に動いていきました。産業廃棄物となっていたかもしれない不純物がカイワレ大根へとつながるという、想像もしていなかった展開が、なんとも創域的だなあと感じます。

自分でやると決めたら、何と言われようとやり続ける

――教員同士の連携は、学生さんたちにはどのように影響していますか。

大宮:堂脇先生のケースのように、1つの研究を教員同士が協力して進める中に学生たちも加わるということは増えていると思います。さらに、教員同士がつながったことをきっかけに新しいテーマが生まれ、それに学生たちが自分たちで取り組んでいくというケースもみられます。新しいテーマの創域ですね。

――また、教員同士の連携が学部内に多数生じることは、いろんな影響や関係性を生み出しそうですね。大宮先生と堂脇先生も、お互いに影響を受けておられますか。

堂脇:大宮先生とは普段から一緒に居るので関係がとても近いです。近すぎて夫婦喧嘩みたいになったりもたまにするんですけど(笑)。僕なんかは勢いで研究を進めている部分もあって、いつも感情論でパーッと行っちゃう。でも、大宮先生を見ているとすごく慎重。さすが防災をやられているので、火消しがうまい、といいますか(笑)。

大宮:(笑)。こんな感じで、よく話してますね(笑)。私と堂脇先生では、研究に対するやり方は違うと感じますが、それだけに、堂脇先生のお話を聞いているといつも、研究者として、教育者として、新たな価値観を発見できますね。

――学部内のいい雰囲気が伝わってきます。最後に、研究者を目指す若い人へのメッセージをお願いします。

大宮:学生のころ、関わっていた学問分野では、多くのことが体系化されてしまっていて、太い幹となるような新たな体系をつくることは難しいと言われることがありました。でも私は、太い幹になるような研究ができないかと、試行錯誤を続けました。そうしてたとえば、当時、建築の防火分野では性能設計に活かされるような成果がほとんどないスプリンクラーに着目し、周囲にはネガティブなことを言われる方もいましたが、それにこだわり続けました。結果いま、建築に関わる法規の中で、以前に比べるとスプリンクラーを設計で考慮することができるようになりました。そのような経験から私は、これはやるべきだと自分自身が思ったことを、根気強くやり続けることが大切だと感じます。また当時、研究を進めるにあたり応援してくれる上司がいたのですが、今度は自分が、学生にとってそういう存在になりたいなと思っています。

堂脇:僕も、20年間同じテーマを追ってきた身として、やりたいと思うテーマがあったら、とことん追求してほしいって思いますね。できないと思っている人には絶対できない。だから、やると決めたら、できると思って最後までやること。そういう気持ちがやはり大切ですよね。……あれ、さっき大宮先生、僕とは考え方が違うというようなことをおっしゃってましたが、この点はばっちり一致しましたね(笑)。

大宮:そうですね(笑)。この点は研究者として本当に重要なんだって改めて感じますね。

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