東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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【創域特別講演会・登壇者インタビュー】機械工学科・小笠原 宏教授

民間企業のエンジニアとして、長い間、活躍されていた小笠原教授。その実体験を交えたお話から、「『創域』が実社会でどう生かされるか」が見えてきました。

2022年9月17日に開催された第1回創域特別講演会。今回は、宇宙を切り口に開催されました。「『卒業旅行は宇宙へ』の実現を目指して」というテーマで講演した、理工学部機械工学科の小笠原 宏(こう)教授の研究室を訪ね、話をうかがいました。

小笠原 宏(おがさわら こう)

京都大学工学部航空工学科卒業。同大学院工学研究科航空工学専攻 修士課程修了後、三菱重工業入社。名古屋航空機製作所 宇宙技術部に配属され、 宇宙ロケットの研究開発・設計・運用や日本版スペースシャトルの研究開発などに携わる。2001年3月三重大学大学院工学研究科機械工学専攻 博士課程修了。三菱重工業宇宙事業部でのマネジメント職を経て、2021年4月より現職。研究分野は航空宇宙工学、高速空気力学。

小笠原研究室
https://www.rs.tus.ac.jp/ogaken_hp3636/index.html

「 誰もが宇宙に行ける日を目指して」。
完全再使用可能な宇宙輸送機実現に取り組む

 小笠原 宏先生が理工学部に着任したのは、2021年4月のこと。以前は重工メーカーのエンジニアとして約30年、宇宙ロケットの研究開発・設計・運用や日本版スペースシャトルの研究開発に従事してきました。
 専門分野は高速空気力学、飛行力学。小笠原研究室では、「誰もが宇宙へ行ける日を目指して」をテーマに、そのために必要となる宇宙輸送機実現に向けた研究を行っています。

「宇宙へ行くには、地球の重力につり合う秒速8km(マッハ26)まで加速し上昇すること、地表帰還にはマッハ26の極超音速から着陸まで安定飛行しつつ十分減速することが必要です。そのため、宇宙輸送機は加速しやすいよう極力軽量ながらも、帰還時の空力荷重や空力加熱に耐えつつ、目標地点に安定・確実に飛行する必要があります」(小笠原先生)  

 このようなことから小笠原研究室では、要素研究として「高速飛行中の機体から噴出させるガスジェットと外部流れの干渉を活用した飛行性能向上」や「機体表面形状の工夫で空力加熱低減につながる流れパターンを導く研究」など、 宇宙輸送機の性能や実現性向上につながるテーマを数値解析や風洞を活用して進めているそうです。
 その一方、システム研究として、使い切りロケットで世界初となる上段ロケットの帰還・再使用を目指し、民間企業との共同研究も進行中。衛星打上げミッション終了後の上段ロケットが、内蔵した伸展式耐熱機構で空力加熱に耐え滑空帰還する構想で、鍵となる伸展式耐熱機構は、小笠原研究室発案で特許申請したものなのだそう。耐熱以外も多くの研究テーマがあり、単段式完全再使用宇宙輸送機実現に向けた第一段階として研究を進めています。

小学生の頃、出会った1冊の本に導かれ、「宇宙」の道へ。
宇宙開発最前線での経験を経て、これから学ぶ人たちに伝えたいこと

 そもそも小笠原先生は、宇宙というテーマにどのようにして出会ったのでしょうか。
 もともとSF少年だったという小笠原先生。そのきっかけは小学生の頃、学級文庫で見つけた1冊の本にありました。ロシアのSF作家エフレーモフ作の『アンドロメダ星雲』。宇宙船タントラ号の大冒険を描いたSF物語です。
 
 この本を読んだ、当時小学生の小笠原先生は、「光子ロケット*に乗って金星に行く」という将来の夢を抱きます。そしてその夢に導かれるように、宇宙や飛行機が大好きな少年時代を過ごし、京都大学の工学部航空工学科、同大学院工学研究科の航空工学専攻(修士)へと進んだのでした。
 大学院の修士論文は柔軟宇宙構造物振動制御。「就職するときはとにかく『宇宙』というキーワードしか無くて」という言葉の通り、重工メーカーに就職後も宇宙への熱意をアピールし、狭き門であった宇宙開発の部署で働く切符を手に入れました。
*光子ロケットとは、物質と反物質を反応させ光に変えて、それを噴射して進むロケット。現実には実現の可能性は低い。

 その後約30年にわたり、民間企業の最前線で研究開発に従事してきた小笠原先生。大学・大学院での学びは、企業での研究生活でどのように役に立ったのでしょうか。
「私が大学院で学んだことで社会に出て役に立ったと思うことの一つに、『問題への取り組み姿勢』があります。問題への取り組み姿勢というのは、例えば問題へのアプローチ、検討手順、新しいことをどうやって調べるか、自分がわからないということをどう説明し理解してもらい、教えてもらうか、わかったことをどう組み合わせるか、組み合わせた上でどういう視点を持つか、それをどう論理的に説明するかといったこと。これらは課題解決にとって共通に必要なこと、どの分野でもどの世界でも普遍的に役立つことだと思います」

 こうした力を、ぜひ大学院での研究生活を通して獲得してほしいという小笠原先生。そして、自分の専門を深く掘り下げるとともに、他分野に好奇心を持ち、他分野の研究者たちとの交流を積極的に持ってほしいと話します。
「違う分野の研究者との交流の中で、相手の研究分野の深い部分が垣間見えることがあります。そこから自分の研究に生かすことができる新しい考え方やアプローチへのヒントが得られることがあります。学生時代にはぜひそんな交流をしてほしいと思っています。それは創域理工学部が目指す「創域」につながるところでもありますね」

忘れられないアメリカ人エンジニアの言葉と
大学教育にかける熱い思い

 最後に約30年にわたるエンジニア生活で、心に残っている出来事をうかがいました。
「1994~1995年頃に日本のスペースシャトルプログラム (HOPE)の開発をしていた時のことです。日本には適した試験設備(極超音速衝撃風洞)が存在しなかったため、世界中にある試験設備を借りて試験を行っていました」
 そうした流れで、1981年に運用開始したスペースシャトル開発にも使われた、アメリカのバッファローにある試験設備(極超音速衝撃風洞)を借用したことがあったそうです。

「その際、その設備を運営している現地のエンジニアが、『スペースシャトルの開発が完了してシャトルの仕事が終わった後、NASP(アメリカ航空局で構想された宇宙航空機)開発の話があったが、中断してしまった。その後は仕事がずっと無かったんだ。宏、いいところに来てくれたよ。スペースシャトル、NASPの開発で学んだことを次世代へつないでいきたかったんだ』と言って、日本では簡単には手に入らない文献をくれたり、多くの経験談を惜しみなく話してくれたんです。その時言われたのが『これは人類の知の継承なんだよ!』という言葉です。強く心に刻まれて、今でも忘れられません」(小笠原先生)

 その後、日本のHOPEもプロジェクトが中断し、自身もそこで学んだ“人類の知”を企業の現場では次世代に引継ぐ機会が無くなってしまったとのこと。 「大学に移籍して、学生に伝えられる機会を持てたのは幸いです。私が大学で教える大きな理由の一つになっています」 と話します。

「人類の知の継承」。その一端を担うという使命が、小笠原先生が大学で教える大きな原動力になっています。

小笠原 宏先生が登壇された9月17日創域特別講演会(zoom開催)の動画を下記からご覧いただけます
https://tus.box.com/s/i4hc9ke0e7dp6t9i6l5aj3q6a3dnw9qe

講演内容: 「卒業旅行は宇宙へ」の実現を目指して 小笠原 宏(理工学部機械工学科教授)

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