東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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「創域」の大きな柱、横断型コースを推進し、より充実した研究環境を作る-電気電子情報工学科・永田肇教授に聞く-

理工学部の学びの仕組み・分野融合的な「横断型コース」で、全7つのコースをとりまとめる推進委員長を務める永田肇教授。横断型コースでの学びや「創域」への思いを聞きました。

「非鉛(ひなまり)圧電材料」の開発を研究する、電気電子情報工学科の永田肇教授は、「横断型コース」のエネルギー・環境コースに所属し、横断型コース全体の推進委員長も務めています。今回は、横断型コースという枠組みの中で得られる、ご自身の研究への好影響、専攻をまたいだ幅広い分野から参加できる教育研究プログラムである「横断型コース」にはどのようなメリットがあるのかなどについて、推進委員長の立場から語っていただきました。

*「横断型コース」についての詳しい情報は理工学部ホームページをご覧ください。
https://dept.tus.ac.jp/st/structure-of-education/course/transverse/

永田 肇(ながた はじめ) 東京理科大学理工学部電気工学科、同大学大学院理工学研究科電気工学専攻 博士課程修了。博士(工学) 。東京理科大学理工学部助手、ペンシルバニア州立大学材料研究所ポスドク研究員、東京理科大学理工学部助教、同講師、同准教授を経て、2017年より同教授。専門は電子・電気材料工学 (電子機能性セラミックス) 。非鉛圧電セラミックスに関する研究・開発を行っている。

環境に優しい 圧電材料を開発する

――まずは永田先生の研究の概要を教えてください。

私たちの研究室では、主に「非鉛(ひなまり)圧電材料」の開発を研究しています。  圧電材料とは、力をかけると電気が発生し、電圧をかけると変形する材料のことです。力をかけると電気が発生する効果を圧電「正」効果、電圧をかけると変形する効果を圧電「逆」効果と呼んでいます。また、交流電圧を加えると、伸び縮みを繰り返して振動し、超音波が発生します。このように圧電材料は、電気エネルギーと機械エネルギーを相互に変換する機能をもっています。この機能が活用され、圧電材料は身近な生活機器から産業機械にいたるまで、幅広く利用されているんです。 

例えば、皆さんの知っているものでは、圧電正効果はライターやチャッカマンの着火石、力に関する物理量センサー(手振れ防止センサー、車のノッキングセンサーなど)、振動発電・音響発電などに、圧電逆効果はインクジェットプリンタ、車のフィールインジェクタ、超音波診断装置、超音波洗浄器などに応用されています。  

――それらの圧電材料のうち、鉛を含まない環境に優しい材料を開発することが永田先生の研究なのですね。

はい。現在、実用化されている圧電材料のうち、一番多く利用されているのは鉛系強誘電体セラミックスのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)です。その名の通り、PZTには鉛が含まれています。欧州には環境保護のため工業製品に鉛を用いないようにする規制(RoHS指令:2006年施行)があるのですが、PZTより圧電性能がよい代替材料候補が現在まで見つかっていないため、現段階では、PZTは例外的に使用が認められています。ですが今後、鉛の使用についての規制は厳しくなると予測されるため、鉛を含まず、かつPZTと同程度の特性をもつ圧電材料の開発が急務となっています。 

――永田研究室の特色を教えてください。

この研究を「作る」→「見る」→「測る」という3つのプロセスを円環させることによって行っています。具体的に言うと、圧電材料を実際に作り、電子顕微鏡などを使って材料の微細構造などを観察する、さらに作成した材料の電気的諸特性を評価する。これらすべての工程を自分たちで行うのがこの研究室の昔からのコンセプトです。  圧電材料のセラミックスも自分たちの手で粉を混ぜて電気炉で焼き、加工成型する。こういったことを電気電子情報工学科という枠組みで行う研究室はめずらしいかもしれません。  こうした取り組みの中で新しい非鉛圧電材料を設計・開発し、さらにそれを応用してデバイスに展開させていくことが私の研究室の目標です。  

横断型コースのつながりが、新たな研究の可能性を開く

――横断型コースに所属されていることは、研究にどのようなメリットがありますか。

先ほど申し上げた「作る」→「見る」→「測る」という3つのプロセスをすべて行うと言っても、我々の研究室は電気電子情報工学科に所属しているので、学生たちが得意としているのは「測る」の部分なんです。作った材料の電気的な性能を評価するとか、それを等価回路に置き換えることとか、そういったことが電気電子情報工学科の学生たちが勉強してきたことを生かせる分野です。ある程度は研究室の中ですべてできるように動いていますが、「見る」、「測る」の部分では、外部の研究所のほか、エネルギー環境コースに所属している他の研究室とコラボレーションすることで、新しい知見を得ることができています。例えば「作る」の部分では、化学の先生に相談し、我々の知らない有機的な材料や、興味深い作成プロセスや技術について教えてもらったり、「見る」の部分でも、結晶構造解析の専門家に我々の考える構造モデルが正しいのか検証してもらったり。こうしたことがエネルギー環境コースというプラットフォームがあることによって、可能になっています。

――学生の学びという点では、どのようなメリットがありますか。

エネルギー環境コースでは、所属する学生を対象に年に数回のコースゼミを開催しています。8月の終わりにはコース全体でポスターコンペティションを開催し、学生が発表し、所属する先生方がほぼ全員参加し聞く場となっています。ここ数年は新型コロナの影響でオンライン開催となっていますが、リアルで開催されていたときには、ポスターの前で、質疑応答や意見交換ができる貴重な機会になっていました。学生の時には、自分の目の前の研究に没頭しがちなので、いろいろな視点から意見がもらえる機会は非常に重要ですね。

――この10月から横断型コース全体の推進委員長に就任されましたね。その立場から、横断型コースのこれからについてお聞かせください。

横のつながりが大事だとわかっていても、卒論審査会や修論審査会も学科や専攻内でクローズして行われるなど、学科や専攻の枠組みの中におさまってしまうのが大学の実状です。しかし、そういう中で、横のつながりを広げて教員同士が手を組める研究のプラットフォームを「横断型コース」という形で、大学として作っていることがめずらしいですし、非常に貴重です。横のつながりが大事という精神論だけでなく、具体的な枠組みがあってこそ、具体的な成果が生まれます。横断型コースでは、各コースで様々なチームプロジェクトが組まれ、共同研究を行ったり、論文を共著で発表したり、この枠組みを積極的に使って活発な研究活動が行われています。

着実に結果を積み上げている過程なので、今後も共同研究や学生同士のコラボレーションを加速させ、より発展させていきたいですね。横断型コースは、わかりやすく言うと、テーマやキーワードを串にして、学科や専攻の枠を超えた研究者や研究室に横ぐしをさしているようなものです。これからも時代時代のニーズに合ったテーマやキーワードで横ぐしをさして、組織として連携研究のプラットフォームを提供し続けていくことが大切だと考えています。

分野横断と専門深化は学びの両輪。
「創域」で社会に貢献できる人材を

――今、理工学部は創域理工学部への名称変更という節目を迎えようとしています。「創域」への思いをお聞かせください。

「創域」という言葉には、横断研究、融合研究という中から、新しい領域、価値、地域を生み出そうという思いが込められているのですが、元々理科大のベースにあるのは、「実力主義」であり「学問深化」です。「学問深化」というのは、専門性を大切に専門領域を深く学ぶということですね。一見方向性が違うように思える横断型と深化型を両方やりたいというのが、我々の希望です。横断型教育を進め、他分野の研究者とコラボレーションした結果、自分の分野の専門知識をしっかりもっていないと他分野の研究者と対等に話すことができないと気がついたり、相手に対して何の貢献もできないということがわかる。つまりは自分の専門性を高めてこそはじめて連携して研究ができる。横断型と学問深化は学びの両輪なのです。  

横断型コースでは、社会に出ても貢献できる人材を育てているという実感があります。横断型コースの学びの環境から、自分の専門を大切にし、相手の専門もリスペクトして、お互いにインターラクションしていくスキルを身につけることができるからです。どの研究分野にも、その分野だけに通じる言語や研究の文化がありますが、他分野の学生とコラボレーションすることによってそれに気がつき、相手の言語や文化を理解すること、こちらの言語や文化を理解してもらえるように説明することを学ぶことができます。自分の属している分野の狭さに気がつき、俯瞰して見る視点ももつことができます。こうして得られた力は社会に出たときに必ず役に立つものです。実際に、横断型コースの学生の就職活動にもよい影響が出始めています。

――永田先生は「創域」に関わる新しい試みにも挑戦されていますね。

はい。大学が主催する「創域の芽プロジェクト」という試みの一環で、学科・専攻を越えた学生がグループを作って企業研究や業種・業界研究を行う場を提供するプログラムを立ち上げました。今回は、分野的に比較的近い電気電子情報工学科、機械工学科、先端化学科の学生を対象にしました。これらの学生の多くが就職する機械・電気・材料系企業の業種分野はボーダーレス化し、分野横断的かつ学際的に多系分野の技術者と共働する人材が求められています。そこで、就職活動についても分野融合教育が必要だと考えたんです。

先日開催された第1回目では、機電系エンジニアの転職サイトを運営する会社から外部講師を招き、講演をしてもらいました。学生たちは職種業種マッチングアプリのトライアル体験もし、研究と仕事(職種)のつながりについて学びました。異なる学科の学生とのディスカッションの時間ももうけたのですが、それはアンケートの結果でもとても好評でしたね。社会で必要とされる理工系学問の価値を伝え、将来のキャリア形成に必要な活躍のイメージをもってもらう場として、今後もこのプログラムを運営していきたいです。複数の専門分野の融合であるもの作りの世界では、専門分野の深掘りと他分野とのつながりが欠かせません。それはまさに「創域」の目指すところでもあります。研究においても、キャリア教育においてもそのことをしっかりと伝えていきたいです。

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