東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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【数理科学科 ダブルラボについて語り合う】-数理科学科・牛島健夫教授 機械航空宇宙工学科・竹村裕教授-

数理科学科4年生が他学科の研究室での研究を体験する教育プログラム「ダブルラボ」。このプログラムの運営に関わる数理科学科 牛島教授と機械航空宇宙工学科 竹村教授の対談から、「ダブルラボ」の魅力に迫ります。

数理科学科の「ダブルラボ」は、数理科学科の4年生が数学の卒業研究と並行し、他学科の研究室での研究を体験する教育プログラムです。
今回は、このプログラムの運営に関わり、他学科へと学生を送り出す数理科学科 牛島教授と、数理科学科からの学生を受け入れる機械航空宇宙工学科 竹村教授に、ダブルラボの現状や成果について詳しく聞きました。

牛島 健夫(うしじま たけお)
東京大学理学部卒業、同大学院数理科学研究科 数理科学専攻 博士課程修了。博士(数理科学)。北海道大学研究員、東京理科大学 理工学部 数学科講師、同准教授などを経て、2021年4月より現職。主な研究分野は 偏微分方程式・数値解析。微分方程式の解の数学的な性質を解明することを目的とした数学の研究のみならず、感染症の数理モデルのような数学、特に、微分方程式の応用に興味を持っている。

牛島研究室
https://www.tus.ac.jp/academics/laboratories/lightbox/3767.html

竹村 裕(たけむら ひろし)
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 博士課程修了。博士(工学)。同非常勤講師、ドイツ・カールスルーエ大学 客員講師、東京理科大学 理工学部 機械工学科助教、同講師、同准教授などを経て2019年4月より現職。人間の歩行解析、歩行ロボット、移動ロボットなどに関する研究に従事。人間や生物の優れたメカニズムを計測・解析し、ロボット、医療・福祉分野などへの応用を目指している。

竹村研究室
https://www.rs.tus.ac.jp/brlab/

*創域理工学部 数理科学科の詳しい情報は、下記をご覧ください。
https://www2.ma.noda.tus.ac.jp
*今回の創域Journalの取材は2023年3月~4月の間に行われました。学部・学科名は2023年4月以降の名称に統一しています。

理工学への応用に明るい、数理科学の人材育成を目指す

――まずは「ダブルラボ」の概要を教えてください。

牛島:ダブルラボとは、創域理工学部数理科学科のカリキュラムで、4年次に同学部他学科研究室での研究活動に参加し、様々な科学の分野においてどのように数学が応用されているのかを学び、また、数学的な知見を他分野の研究室に提供することによって相互に学ぶことを目的とした新しい取り組みです。数理科学科ではこのプログラムを通し、理工学への応用に明るい数理科学の人材育成を目指しています。
ダブルラボは正式には、創域理工学部の数理科学科「先端数理系」4年生のカリキュラムとして、4月から本格的にスタートしたところです。2020年度から試行が始まり、これまであわせて約30の研究室にご協力いただき、約60名の4年生を受け入れてもらいました。

――ダブルラボに参加する学生にとってのメリットを教えてください。

牛島:数学が他の理工学の分野でどのように使われているのか、実際に目にすることができるということが一番大きなメリットです。また、大学院への進学率が高い学科の研究室に参加した場合には、まわりの学生たちから刺激を受け、向学意欲が高まることを期待しています。数理科学科の大学院に進学し、数学以外のところにある問題を数学的に扱っていこうと考える動機づけになるとよいなと考えています。数学を実際に使っているところで、より社会実装に近い先生方の研究室で学ぶ経験は、就職を目指す学生にも非常に役に立つことだと思います。大学院進学を目指す学生にも、卒業後、就職する学生にも貴重な経験ができる教育プログラムです。

―― ダブルラボの学生は、受け入れ先の研究室ではどのような形で参加するのでしょうか。

牛島:各学科や各研究室の研究内容、その時々の状況によって異なります。特殊な実験が行われるような研究室では、3年次までの知識や経験が無いと、いきなり実験に参加できない場合もあります。

竹村:私の研究室では、私の研究室に所属する4年生とほぼ同様の扱いで参加してもらっています。ゼミでは同じ課題を課し、研究室のミーティングにも同じように参加してもらっています。例えば先日、シンポジウムで発表をした(数理科学科の)学生もいますよ。

牛島:そういった経験は数理科学科の4年生ではなかなかできないですね。数学の分野では、初めて学会発表するのが博士課程になってからであるのは普通のことですし、場合によってはそれが博士課程を終えてからになる人もいます 。それが4年生のうちにできるというのは、ダブルラボに参加したからこそさせていただける経験ですね。

竹村:学会発表一つとっても、分野により違うのですから、様々な部分で各分野の文化がありますよね。工学系の分野では、積極的に成果をアピールしていく姿勢が重要です。こういうことをやりましたとアピールしないと、どんどん新しいものが次々出てきてしまうので、みんなどんどん発表します。プレゼンの準備をする、ポスターの準備をして人前で発表するという過程を通して、学生たちは鍛えられていますね。

竹村教授(左)と牛島教授(右)

他分野の文化にふれることで、
自分の専門分野の輪郭がはっきりと見えてくる

―― ダブルラボの受け入れ側の研究室では、どのようなよい点がありますか。

竹村:まず第一に、研究室の学生に、数学の知見を与えてもらえるということです。さらには、3年生まで育った文化がまったく違う学生が入ることで、私の研究室の学生も新しい文化を学ぶことができています。数学の知見だけでなく、数学の考え方、数学という研究分野の文化を知ることができ、私の研究室の学生たちにとってはよい刺激になっています。
機械工学では答え(もの)を創ることが大切だとされています。ものを創って結果を出す。その答えが最適かはわからないけれど、とりあえず答えを創りだせることが大切です。私の個人的なイメージですが、数学では「答えがあるかどうかを知りたい。答えを導き出きだせるかどうか」を大切にされているのかなと感じています。そうした学問の文化の違いにふれることで、自分の専門分野についての理解が深まるという面もあります。それは私の研究室の学生にとってもとても有意義なことだと考えています。まさに創域理工学部が目指す「創域」にもつながるのではないかと思います。

牛島:受け入れ側の研究室の先生にそう言っていただけることは大変ありがたいです。私自身も、ダブルラボに参加する学生のために他の先生方と協力体制を築く中で、交流が生まれ、研究生活に生かせる新しい視点を得ているという実感があります。
数学の人間はどうしてこうなるのか、その問題が何でそういう理由でそうなっているのかなということに興味がある感じなのですが、例えば工学の先生方は、その問題をどうするか、どうやって解決するかというところにもっと興味があるのだなと感じます。同じ問題を見ていても、興味が全然違うので、他分野の先生方とのお話は本当に楽しく、学ぶことが多いのです。

竹村:私は以前から、他の分野の方たちとの交流を大切にしてきたほうです。他の分野の方たちと交流することで、自分のところで抱えていた問題が違うところにいくと問題でなかったり、すぐに解決策があったり、私たちが想像もしていなかった方向から解決できたり、自分の考えが凝り固まっていたなと気づかされたりもします。自分の分野の常識や普通だと考えてきたことをいったん取り払うことで、見えてくることがたくさんありますからね。
またその反対も然りで、他の先生の課題が我々にとってはすぐに解決できる問題であることもあります。そうやって他分野にも貢献ができることがあります。ダブルラボの学生を受け入れることで、自分の研究室の学生たちにもこうした経験をさせることができ、それは彼らにとっても貴重な財産となっています。

牛島:他の分野について学び、他分野の文化を知ることで、自分の専門分野の輪郭がよりはっきりと見えてくることってありますよね。ダブルラボに参加した学生たちからは、ダブルラボへの参加を通して数学を学ぶ新たな目的意識を得た、数学をより深く学びたいというきっかけとなった、というような声が聞かれています。これから参加する学生にも同様に、一回りも二回りも大きくなってくれることを期待しています。
補足させていただくと、数理科学科では、従来通り数学自体の深みを学ぶ「数学系」とダブルラボを行い数学の広がりを学ぶ「先端数理系」の2つの系を設けています。数学系は、とことん数学を極めたい、数学に集中して学びを深めたい学生のためのコースです。

「創域」という言葉に思いを馳せる、それぞれの未来

―― 創域理工学部に名前が変わり、学部として新しいスタートを切りましたが、「創域」についての思いをお聞かせください。

竹村:今までも自分と近い研究分野の方々とは交流があったのですが、「創域理工学部」として「創域」を目指すことによって、様々な枠組みが生まれ、今まで交流が無かった分野の方々とも融合できている感覚がありますね。例えば数学も、私にとっては遠いところにあったのですが、今回のダブルラボで連携することができました。
ある分野とある分野の間に、未開拓の新しい分野があったりする、あるいは創出できる可能性があったりする。「創域理工学部」に生まれ変わることで、そういった発見ができるのではないかという期待感があります。

牛島:「創域」という言葉は、我々創域理工学部が、みんなで未来を創り上げていくときの合言葉のような感覚があります。必ずしも共同研究をするというだけでなく、最初は近くの人と気軽に話をしてみる。そこで話した内容で刺激を受け、自分のところで何かをする。まずはそういう小さなことも含めてリレーションシップを築いていきましょうという標語のようなものですね。その先に共同研究なり、もっと先に新しい分野の創出があるのではないかと感じています。

―― 牛島先生は「創域」に関わる新しい試みにも挑戦されていますね。

牛島:はい。大学が主催する「創域の芽プロジェクト」という試みの一環で、「ダブルラボのススメ」というイベントを開催しました。数学と他分野との共創の豊富な成功例を持つ他大学の3人の先生方をお招きし、共創の秘訣を講演していただきました。他分野との共創の苦労も喜びも具体的な進め方や秘訣も惜しみなく話してくださった先生方のおかげで、参加した学生たちからは大好評を得ることができました。これからもダブルラボという教育プログラムをよりブラシュアップさせていくと同時に、こうした取り組みにも力を入れていきます。

牛島先生が中心となり開催された「創域の芽プロジェクト イベント ダブルラボのススメ~共創のプロにその秘訣を学ぼう」の開催報告は下記をご覧ください。

開催報告 創域の芽プロジェクト イベント
ダブルラボのススメ~共創のプロにその秘訣を学ぼう

3月13日(月)、「創域の芽プロジェクト イベント ダブルラボのススメ~共創のプロにその秘訣を学ぼう」が開催されました。
イベントの冒頭では、数理科学科教授でもある伊藤浩行 創域理工学部長が挨拶。講演では、数学と他分野との共創の豊富な経験を持つ、3人の先生方にお話しいただきました。

講演者と講演内容
下川航也先生(お茶の水女子大学 教授)「3次元トポロジーの高分子・超分子への応用」
長江剛志先生(東北大学 准教授)「確率的進化ゲーム:交通・都市経済均衡モデルに対するLangevin拡散過程とBoltzmann型定常分布」
長山雅晴先生(北海道大学 教授)「社会実装、社会貢献を目指した数理モデリング 数理モデリングの皮膚科学への応用」

講演では、数学と化学の共同研究がどのように始まり、どのような経過をたどったかがわかる詳しい実例(下川先生)や、新しい交通システムの研究に数学や経済の知見が生かされた、工学と他分野の共創(長江先生)、数理モデリングを用いた皮膚科学との共同研究(長山先生)など、バラエティに富んだ共創の実例をお話しいただき、参加した学生・教員は、熱心に耳を傾けていました。

創域理工学部 伊藤学部長より挨拶

下川航也先生(お茶の水女子大学 教授)
長江剛志先生(東北大学 准教授 )
長山雅晴先生(北海道大学 教授)

イベントでは、数学と他分野との共創をテーマとしたポスターセッションも開催され、すぐれた発表をした2名の学生が表彰されました。ポスターセッションには講演者の3人の先生方も参加してくださり、共創のプロにアドバイスをいただける貴重な場となりました。
さらにイベントの最後には、数理科学科 青木教授がファシリテーターとなり、パネル討論も行われ、講演の内容や先生方の研究への理解が深まる中身の濃い対話を聞くことができました。

イベントを企画・運営した牛島教授
熱心に聞き入る学生・教員
盛り上がったポスターセッション
優秀作品に選ばれた 機械航空宇宙工学専攻 竹村研究室 橋詰彩奈さんのポスター
優秀作品に選ばれた 古田土恭輔さんのポスター (受賞時 ダブルラボ参加中)

パネル討論の様子

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