東京理科大学 TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

創域理工学部 理工学研究科

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地盤の液状化について深く理解し、その対策や評価法を確立する―社会基盤工学科・塚本良道教授に聞く―

地盤工学を専門とし、住宅などの小規模な建物の地盤の液状化に関する対策、評価法の研究に取り組み様々な方法を提案されている塚本教授。液状化の研究について、そして創域への思いについてお聞きしました。

2011年の東日本大震災において、千葉県浦安市をはじめとする各地で地盤の液状化が起きたことを記憶している人は多いと思います。地震の揺れによって液状化が起きることは1960年代に広く知られるようになり、社会基盤構造物に関しては対策がとられるようになったものの、住宅などの小規模な建物については、十分な対策や評価法がないままでした。しかし東日本大震災後、その重要性が広く認識されるようになりました。地盤工学を専門とする塚本教授は、近年その研究に取り組み、いろいろな方法を提案してきました。同時に、「創域」の重要性を感じてきたそうです。液状化の研究について、そして創域への思いについて、塚本教授に聞きました。

塚本良道(つかもとよしみち)1990年東京大学工学部土木工学科卒業、1993年ケンブリッジ大学大学院工学系研究科地盤工学博士課程単位取得満期退退学。九州大学工学部建設都市工学科助手、東京理科大学理工学部土木工学科准教授などを経て、2012年4月より現職。

液状化しやすい土地を判定し、対策を考える

――塚本先生の研究の概要を教えてください。

私が専門とするのは、地盤工学という分野です。地震が起きたときに地面(地盤)の土がどのような挙動するか、といったことを考える分野で、土について、力学という側面から考えていきます。その中で私は特に、地震の際に生じる地盤の「液状化」に関する研究を行っています。

液状化とは、その名の通り、地震の強い揺れによって地盤が液体のようにドロドロになってしまう現象です。2011年の東日本大震災により千葉県の浦安市などで液状化が起きたことで広く知られるようになりましたが、最初に液状化が問題となったのは、1960年代まで遡ります。1964年、日本では新潟地震が起き、アメリカではアラスカ地震が起きました。その時、両地震で液状化の被害が顕著だったことを機に、研究されていくことになりました。

現在では、どのような地盤が液状化しやすいかは経験的にはわかるようになってきています。たとえば、地質地形との関係では、液状化が起きやすい微地形が存在することが知られています。微地形の具体例としては、埋め立て地、自然堤防、氾濫原、後背湿地、砂州などがあります。ただ、なぜこのような地盤において液状化が起きやすいのかの理論的な裏付けは十分ではありません。私たちはその理論面の解明を進め、液状化のメカニズムをより深く理解するとともに、液状化を防ぐための対策を考えたり、液状化が起きやすい地盤をより合理的に判定・評価する方法を確立することを目指して研究を行っています。

――地盤の液状化は、どのようなメカニズムで起きるのですか。

地下水面下の地盤は、砂や土などの粒子が水のなかで堆積してバランスを保った状態にありますが、地震動によってそのバランスが崩れ、砂などの粒子が水のなかで浮いたような状態になり、地盤が液体のようにふるまい始めます。地震動がおさまると、砂などの粒子が沈み、水が地表へと噴き出てきます。これが、液状化に関わる一連の過程です。その結果、液状化後には、地盤の沈下が生じ、地盤上の建物が沈下したり傾くなどの被害へとつながります。

そのような基本的なメカニズムは明らかなのですが、この場所が具体的にどのくらい液状化のリスクがあるか、というような定量的な評価は困難です。液状化に脆弱な微地形だからとか、大きく揺れたからといって、必ず液状化が起きるわけではありません。東日本大震災においては、震源から距離のある浦安市などでも、埋め立て履歴のある地点において、液状化が集中的に起きました。そのような地盤の特性に加え、地震動の揺れの大きさや長さにも影響を大きく受けたようです。14時46分の本震の30分後に茨城県沖で大きな余震があった影響も大きいと考えられています。その土地の地形や成り立ちと地盤の状態に加えて、地震による揺れの大きさや長さなど、さまざまな条件の影響を受けて、液状化が起こるのです。

住宅などにおける液状化の対策と評価法を確立したい

――液状化と地盤などの関係を理論的に明らかにすること、そして液状化の対策や評価法を確立するといったことが先生の研究のテーマだと伺いました。これらのテーマのうち、いま具体的に取り組まれていることをいくつか教えてください。

液状化に関する基礎的な研究と、応用的な研究を行っています。

基礎的な研究では、砂を粒状体と捉えて、どのような粒径分布の土がどの程度液状化に脆弱なのか、といった評価法の確立を、室内試験を行うことにより明らかにすることを目指しています。

応用的な研究では、まず、その背景を先に少し説明します。橋梁や盛土地盤・埋め立て地盤といった社会基盤に関しては、液状化への対策や評価の方法は、社会実装が進められ確立してきています。たとえば、竣工後の埋め立て地盤の対策には締固め工法が利用されます。構造物をまだ建てる前の地盤に、ケーシングパイプを打ち込み、ケーシングパイプを抜きながら、パイプ上部から砂の投入・締固めを行い、地盤内に砂柱を、一定間隔で造成する方法です。砂中周辺の地盤は締固められ、液状化しにくくなるのです。

――なるほど、大型構造物の液状化対策はすでにあるのですね。しかし、小規模な建物についてはそうではない、のでしょうか。

はい。住宅などの小規模な建物に関しては、対策も評価法も確立されていないんです。それが東日本大震災を経て、住宅地においても液状化対策が求められるようになり、研究されるようになりました。

そうした中で私たちが、対策法の一つとして最近4,5年の間、研究を進めてきたのが、細かいセメント粒子を溶液にして、地盤の中に浸透させて固めるという方法です。この方法であれば、大型の施工機械も必要ありませんので、すでに建物が建っている地盤にも使えます。適用可能な地盤の条件を明確にするなど、まだクリアしなければならない課題がありますが、実験では良好な結果を得ることができています。

また、もう一つの対策法としてここ1,2年研究しているのが、液状化により地盤内で発生する水圧の増加を抑制する方法です。液状化は、地盤が揺さぶられることによって、内部の水圧が上がることにより生じるので、水圧が上がらないようにすれば、液状化が進むのを防げると考えられます。そのための方法としていま、塩ビ管(ポリ塩化ビニルの配管)に排水促進キットを付して、地盤内に敷設することによって、地震が起こった時、水圧が上がったら瞬時に排水を促す仕組みを作ろうと試みています。もちろん排水しすぎると地盤沈下が起きてしまいますので、その配慮も必要です。

――東日本大震災の時、液状化の被害を受けた住宅のことをニュースで見たのを覚えています。これらの方法が実用化されれば、広く役に立ちそうですね。では、液状化の評価方法についてはいかがでしょうか。

建物や社会基盤の建設時に地盤を調査する方法として、日本では、標準貫入試験(※1)という方法が使われてきました。その一方、近年、より簡易的な方法としてSWS試験(※2)というものも使われようになり、特に宅地の地盤調査においては、SWS試験の方が一般的になっています。私は、自分の恩師がSWS試験の研究をしていた経緯から、理科大において30年ほどSWS試験の研究を継続してきたのですが、東日本大震災を経て、液状化の問題が注目を集める中、この試験を液状化の評価に使うことはできないかと考えるようになりました。もともと液状化評価のための試験ではないので、SWS試験の結果から、どうやって液状化の可能性を評価するかが重要になります。その方法を確立するため、液状化が実際に起こった場所などでSWS試験を行い、さまざまな検討を進めています。

※1 ボーリングによって掘削した孔に、規定の方法でサンプラーと呼ばれる棒を打ち込み、地盤の硬さを測る方法。

※2 スクリューウエイト貫入試験。細い鉄の棒を地盤に垂直に差し込み、その沈み具合で地盤の硬さなどを調査する。以前はスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれた。

学生たちの間にも自然にある”創域”的な意識

――続いて「創域」についてお伺いします。「創域理工学部」という改称された中、創域という言葉について、先生はどういうイメージを持たれていますか。

旧理工学部、現在の創域理工学部は、卒業して「学士(理学)」をもらう人もいれば、「学士(工学)」をもらう人もいます。たくさんの学科があって、いろんな学問分野の人が集まっているのが特徴です。せっかくそのような環境にいるのだから、やはり異分野の人同士が協力することでこれまでにないものを生み出していくというのが、この学部の目指す方向として理想的だとこれまでも思ってきました。その意味でも、学部名に「創域」という言葉を冠して明確にその方針を打ち出したのはとてもよいことだと思っています。

私の専門である地盤・地質・土壌も、理学、農学、工学という複数の分野において研究が進められ、互いに刺激しあい、知識・知見が深まってきた歴史があります。地震や液状化も、やはり一つの分野の専門家だけでは扱えず、たとえば先に紹介した微粒子セメントを利用した液状化対策の研究も、異なる分野と協力して進めています。創域理工学部になり、そのような流れに弾みがつき、さらにいろいろと新しいものが生まれてくることを期待しています。

――学生の雰囲気にも、”創域感”は出てきていると感じますか。

2017年に横断型コースが始まって以来、学部全体で、創域的な意識を高めようといろんな取り組みをしてきました。その結果、最近いよいよ、学生たちもその意識を自然に持つようになったと感じています。私たちの研究室でも他の大学や企業の方とともに研究を進めていますが、学生自身それぞれ、他の分野、他の研究者のやっていることに積極的に目を向けています。また、自分の取り組んでいる事柄が専門の違う人たちからどのように見えるのかを考え、色々な意見や批判ももらい、研究に生かしていこうする姿勢も出てきています。こういう意識を学生のうちから身に付けておくことは、どのような道に進むにしても役立つはずです。視野を広げたり、他者とのつながりを作ったりしていく上で、とても大切になってくると思います。

ダイバーシティの中にいるからこそ

――先生が感じる創域理工学部の魅力はどのような点ですか。

我々東京理科大学は、単科大学に見られがちですが、創域理工学部について言えば、大いにダイバーシティを感じられるところだと思っています。先にお話しした通り、いろんな分野の人と融合できるからこそ新しいものを生み出せる環境であるということに加え、逆に、そのような広がりの中にいるからこそ、自分の専門領域の奥深さを知ることができる、ということもあるはずです。つまり、ダイバーシティの中にいるからこそ、自分のアイデンティティがよくわかる。その点も、創域理工学部の魅力だと感じます。

――最後に、先生にとって研究の楽しさはどんなところにあるか、教えてください。

やはり、思わぬ発見があるということですね。たとえば砂は、固体の粒子が集まった粒状体ですが、砂を粒状体として扱うと、思わぬ形で粒状体としての性質が表れて驚かされることがあるんです。そういう新しい発見を前にして、最初は信じられないと思ってもさらに調べていくと本当だとわかっていく。そのように常に新しい世界と対峙しながら仕事ができることは、自分にとって幸せなことだなと感じます。これからも、そんな喜びを多くの若い人たちと共有しながら、研究を続けていきたいですね。

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